【改正民法】連帯保証に関する変更点について
2019/11/18 法改正対応, 民法・商法, 法改正

はじめに
平成29年5月26日に成立した改正民法が来年4月1日に施行されます。
明治29年制定以来の大改正となっております。
改正民法についてはこれまでも取り上げてきましたが、今回は連帯保証と根保証について見ていきます。
連帯保証とは
金銭消費貸借契約や賃貸借契約などで債務者が債務を履行しない場合に備えて保証人を立てることがあります。
保証人の保証債務はあくまでも主たる債務が履行されない場合の補充的、二次的な債務です。
そのため保証人は債権者から請求された場合、まずは債務者に請求するよう主張することができます(催告の抗弁 民法452条)。
また債務者の資力や執行が容易であることを立証することにより、まずは債務者の財産に執行するよう主張することもできます(検索の抗弁 453条)。
そして保証人が複数いる場合は各保証人の負担は保証人の頭割りとなります(分別の利益)。
しかしこれらの保証人に認められた催告の抗弁権や検索の抗弁権、分別の利益は特約で排除することができます。
そのような保証をいわゆる連帯保証と言います。
保証人にとっては非常に重い負担となります。
以下連帯保証に関する改正点を見ていきます。
連帯保証に関する改正点
(1)個人根保証契約の極度額
債権者と債務者間で生じる不特定の債務を担保する保証を根保証と呼びます。
「保証人は本契約上負担する一切の債務を連帯して保証する。」といった契約条項のある契約です。
改正民本では個人根保証契約では極度額を定めなければ無効となります(改正民法465条の2第2項)。
個人根保証とは保証人が法人ではない場合を言います。
そして極度額の定めは書面か電磁的記録によって定める必要があります(同3項)。
過大な債務から保証人を保護することが目的です。
(2)主債務者から保証人への情報提供義務
事業のために負担した貸金等を主債務とする保証の場合には、主債務者は保証人に対して契約締結時に情報提供義務を負うことになります(改正民法465条の10)。
情報の内容は①財産、収支状況、②主たる債務以外に負担している債務の有無と履行状況、③主たる債務への他の担保の有無と内容となります。
これらの情報を提供せず、または虚偽の内容を提供し、保証人が誤認して契約し、債権者も悪意または過失がある場合は保証契約を取り消すことができます(同2項)。
なおこれらの規定は保証人が法人ではない場合に適用となります(同3項)。
(3)債権者から保証人への情報提供義務
債権者は保証人から請求があった場合、主債務者の債務の履行状況について情報を提供する義務を負うことになります(改正民法458条2)。
提供する情報の内容は①元本、利息、違約金等についての履行状況、②残高、③そのうち弁済期が到来しているものの残高となります。
また主たる債務者が期限の利益を喪失したときも保証人に2ヶ月以内に通知する必要があります(改正民法458条の3)。
通知をしなければ遅延損害金を保証人にその間の遅延損害金を請求できなくなります。
コメント
以上のように改正民法では保証や根保証、連帯保証などについてかなり大きな改正が入っております。
法人ではない個人が連帯保証人や根保証人などとなり、知らない間に過大な負担を強いられるといった例が多く、このような個人を保護することが今回の改正の趣旨となっております。
事業に関する継続的売買契約や継続的消費貸借契約などで保証人を立てる場合や賃貸借契約で保証人を立てる場合は注意が必要です。
これらの保証人は多くの場合個人の根保証人や連帯保証人となっている例が多く、今回の法改正の対象となってきます。
契約書には極度額の条項および主債務者の財産状況や履行状況その他の担保についての情報提供の条項を追加していくことが必要となります。
なお今回の法改正は施行日である2020年4月1日以後に締結された契約に適用されることとなります(改正民法附則21条1項)。
この日以後の契約や更新に備え、法改正に対応した契約書を準備しておくことが重要と言えるでしょう。
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