ふくおかFGが十八銀を完全子会社化、株式交換について
2019/01/22 商事法務, 会社法

はじめに
十八銀行は18日、ふくおかFGとの経営統合について臨時株主総会を招集し承認されたことがわかりました。これにより十八銀は今年4月からふくおかFGの完全子会社となります。今回は株式交換について見ていきます。
事案の概要
報道などによりますと、ふくおかFGと長崎県最大手の十八銀行は昨年10月31日、経営統合することで最終合意しました。両行の経営統合については長崎県内での寡占化が進む懸念から公正取引委員会の審査が長引き、経営統合の基本合意から3年が経過するとのことです。昨日の十八銀行での臨時株主総会による承認を受け、今後3月に十八銀行は上場廃止となり、4月にふくおかFGの完全子会社となります。交換比率は十八銀株1株に対しふくおかFG株1.12株が与えられます。
株式交換とは
株式交換とは、特定の会社の全株式を親会社となる会社に移転させ、代わりに親会社となる会社の株式を交付する制度を言います。これにより完全子会社となる会社の株主は完全親会社の株主となります。完全親子会社関係を作るための制度と言えます。これに似た制度として株式移転というものも存在します。これは特定の会社の全株式を、新たに設立する会社に移転させる制度です。既存の会社同士で行う株式交換に対し、株式移転は新たに完全親会社を設立するというものです。
株式交換の手続
株式交換を行うにはまず、当事会社で株式交換契約を締結し対価や効力発生日などを決定します(会社法768条)。対価は通常親会社となる会社の株式ですが社債や金銭などでも可能です。注意が必要なのは完全子会社となる会社の新株予約権です。新株予約権が行使されると100%親子会社関係が崩れることから新株予約権は株式交換で消滅することになり、代わりに親会社新株予約権が与えられます。そして両当事会社で特別決議による承認決議を得ることになりますが(783条1項、795条1項、309条2項12号)、片方が他方の議決権の90%以上を保有している場合(特別支配会社)は保有されている側は決議は不要です(略式)。なお株式交換は株式が移動するだけであるため原則として債権者異議手続は不要となります。
その他の制度
完全親子会社化を行うその他の方法としては株式併合や全部取得条項付種類株式の取得によって残った少数株主から株式を取得する(スクイーズ・アウト)方法があります。親会社以外の株主の株式が1株未満となる比率で併合を行ったり、全部取得条項付種類株式に変更して同時に取得してしまうということです。そして平成26年改正では議決権の90%以上を保有する特別支配株主による売渡請求という制度ができました(179条~179条の10)。売渡請求権の行使を会社に通知すると、会社は取締役会等で承認し各株主に通知します。そして取得日に自動的に株式が移転することなります。この方法の場合は株主総会による承認決議が不要で簡単な手続でスクイーズ・アウトが可能となります。
コメント
1月18日の十八銀行の臨時株主総会で本件株式交換契約が承認されました。これにより十八銀行の全ての株式は効力発生日である4月1日にふくおかFGに移転することになり、それまでの十八銀行の株主には代わりにふくおかFGの株式が与えられることとなります。株式交換は吸収合併と異なり複数の会社が一つになるわけではなく、独立した会社として存続します。その会社本来の特色や強みを残しつつ完全なグループとして統合し両社のシナジーを確保できる制度と言えます。また上記のようにすでに親会社側が90%以上を保有している場合は株式交換よりも簡易な手続によって完全子会社化することも可能です。完全に会社を吸収するのか、存続させた上で完全な指揮下に置くかといった統合方針や保有率などを総合的に検討して、最も適切な手続を選択することが重要と言えるでしょう。
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登島和弘 氏(新企業法務倶楽部 代表取締役…企業法務歴33年)
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