法務省が株主総会での書面投票義務廃止を検討、会社法改正の動き
2026/03/19   総会対応, コンプライアンス, 法改正, 会社法

はじめに

法務省の法制審議会が株主総会の書面投票を義務付ける会社法の規定の廃止を検討していることがわかりました。議決権行使をインターネットのみで行うことを認め企業の負担を減らす狙いとのことです。今回は株主総会での議決権行使について見ていきます。

 

株主総会の招集手続き

株主総会を招集するに際しては、原則として株主に招集通知を発送する必要があります(会社法299条1項)。
通知時期としては、公開会社では株主総会の開催日の2週間前までに発信する必要があります。

非公開会社の場合は書面または電子投票を採用するかで分けられ、採用しない場合は1週間前まで、採用する場合は2週間前までに発信することを要します。
ちなみに、取締役会非設置会社であれば書面・電子投票を採用しない場合、定款で1週間の期間をさらに短縮できます。
ここでいう「開催日の2週間前まで」とは具体的に、開催日と発信日の間に14日以上の期間がなければならないことを意味し、たとえば6月23日に開催予定であればその15日前である6月8日がデッドラインということです。

通知方法としては、取締役会設置会社および書面・電子投票を採用する場合は書面で通知することを要します(299条2項1号、2号)。
取締役会設置会社でも株主の承諾がある場合は電磁的方法による通知が可能です。取締役会非設置会社の場合はこのような制限はなく、口頭や電話、メールなど様々な方法が認められます。

なお、これらの手続きは書面・電子投票を採用している場合を除き、総株主の同意があれば省略できます(300条)。

 

株主総会における議決権行使

株主の議決権行使方法としては、株主総会に出席して行使する他に上でも触れた書面投票と電子投票が用意されています。

書面投票の場合、株主は議決権行使書面に必要な事項を記載して原則として株主総会の日時の直前の営業時間終了時または定められた日時までに株式会社に提出して行使することとなります(311条1項、会社法施行規則69条)。
提出された議決権行使書面は株主総会の日から3か月間本店に備え置かれ、株主は営業時間内であればいつでも閲覧・謄写請求ができます(311条3項、4項)。ちなみに、株主の数が1000人以上の会社は原則として書面投票を採用する必要があります(298条2項)。

次に電子投票の場合、株主は株式会社の承諾を得て株主総会の日時の直前の営業時間の終了時、または特に定められた日時までに電磁敵方法により株式会社に提供して行使することとなります(312条1項)。ちなみに、会社は正当な理由がなければ承諾を拒むことはできません(同2項)。
一般的には会社が株主に割り当てたパスワードや専用コード番号などを株主から送信してもらう方法で株主本人の確認を行います。

また、議決権行使は代理人によって行うことも可能です(310条)。その際には代理権を証明する書面を会社に提出することとなります。代理人を株主に限定する定款規定も株主総会が第三者に撹乱されることを防止するといった目的の範囲内で有効とされています(最判昭和43年11月1日)。

 

書面投票に関する裁判例

書面投票における議決権行使書面の行使期間に関する最近の裁判例を一つ紹介しておきます。

上でも触れたように書面投票を採用する場合は株主は議決権行使書面を原則として株主総会直前の営業時間終了時までに会社に提出することとなりますが、提出期限を会社があえて定めることも可能です。

提出期限を定める場合、招集通知を発送した日から2週間を経過した日以降の日を期限として定める必要があります(298条1項5号、施行規則63条3号ロ)。つまり、この場合は招集通知を遅くとも株主総会開催日の16日前までに発送する必要があるということです。

この事例では営業時間が午後5時20分に終了する会社が株主総会直前日の午後5時を提出期限と定め、株主総会の15日前に招集通知を発送していました。裁判所は法令違反を認めつつも、その20分間で議決権行使書面が提出された証拠はなく、手続きの瑕疵は重大ではなく決議に影響を及ぼさないとして決議取消の訴えを裁量棄却しています(東京地裁令和3年4月8日)。

 

コメント

報道によりますと、近年電子投票を採用する上場企業は87%に達しているとされています。
電子投票は集計の誤り防止や負担軽減につながる一方、デジタル機器に不慣れな高齢者にとって電子投票は利用しにくくなるとの指摘もあります。これに対し、書面投票は往復の郵送に時間もかかりコストも増加します。

そこで、法務省の法制審では株主数が1000人以上の企業に書面投票の採用を義務付ける会社法の規定の廃止をパブリックコメントを経て判断するとのことです。

以上のように株主総会の招集や議決権行使には会社法上詳細な手続き規定が置かれています。
上で紹介した裁判例のように些細な手続きの不備でも決議取消訴訟に発展することも有りえます。

株主総会招集の際には期日に余裕を持って慎重に進めていくことが重要と言えるでしょう。

 

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