消費者契約法の改正点完全網羅
2017/07/12 法改正対応, 消費者取引関連法務, 消費者契約法, その他

はじめに
6月3日に改正消費者契約法が施行されて約1ヶ月が経過しました。
今回の改正では、特に認知症などで判断能力の低下した高齢者を保護するものとなりました。これに伴い、従来は違法でなかった契約が今後は違法となる場合が出てきました。
そこで今回は、新しい消費者契約の改正点について、あらためて確認したいと思います。
消費者契約法の適用範囲
消費者契約法は消費者と事業者との間で締結する契約のうち、労働契約以外のあらゆる契約が対象となります。
※消費者、事業者の意味
・消費者とは、個人(事業としてまたは事業のために契約の当事者となる場合を除く)を指します(消費者契約法2条1項)。
・事業者とは、法人その他の団体、及び事業として又は事業のために契約の当事者となる場合における個人事業者をいいます(同2項)。
新設・変更された点は?
改正消費者契約法では以下の点につき、条文が新設・変更されました
1.「重要事項」の範囲の拡大(4条5項3号)
2.過量契約の新設(4条4項)
3.消費者の解除権を放棄させる条項を無効とする条文の新設(8条の2)
4.消費者の利益を一方的に害する条項を無効とする条文の新設(10条)
5.取消権の行使期間を6ヶ月から1年間に延長(7条)
以下、個別にみていくことにします。
1.「重要事項」の範囲の拡大(4条5項3号)
勧誘時に不実告知(「重要事項」について事実と異なることを告げること)があった場合、当該消費者は契約を取り消すことが出来ます。
新消費者契約法により、契約の目的となるものについてでなく、生命、身体、財産その他の重要な利益についての損害又は危険を回避する必要性に関する事項について不実告知があった場合にも取消しが出来るようになりました。
(例) 真実に反して「タイヤが磨耗しておりこのまま走ると危ない。タイヤ交換が必要」と告げて新しいタイヤを購入させた場合
2.過量契約の新設(4条4項)
事業者が消費者契約の締結について勧誘するに際し、当該消費者契約の目的物の分量等が当該消費者にとっての通常の分量等を著しく超えるものであることを知っていた場合、当該消費者は当該契約を取り消すことが出来るようになりました。
(例) 一人暮らしの高齢者に対し何十組もの布団を販売した場合
3.消費者の解除権を放棄させる条項を無効とする条文の新設(8条の2)
事業者の債務不履行の場合でも消費者の解除権を放棄させる条項について、無効であることが明示されました。
(例) 「販売した商品については、いかなる理由があっても、御契約後のキャンセル・返品はできません」とする条項
4.消費者の利益を一方的に害する条項を無効とする条文の新設(10条)
任意規定(法令の規定のうち、当事者の合意によって適用を排除できる規定)の適用による場合と比べ消費者の権利を制限し又は義務を加重する条項であって(第1要件)、信義則(具体的状況のもとで、相互に相手方の信頼を裏切らないように行動すべきという原則)に反して消費者の利益を一方的に害するもの(第2要件)は無効となっています。
改正により、消費者の不作為(特定の積極的行為を、あえてやらないこと)をもって当該消費者が新たな消費者契約の申込み、またはその承諾の意思表示をしたものとみなす条項が第1要件の例示として追加されました。
(例) 購入した覚えのない健康食品が自宅に届けられた場合に、消費者が継続購入しない旨の電話をしない限り、継続的に購入するとみなす旨の条項
5.取消権の行使期間を6ヶ月から1年間に延長(7条)
消費者の取消権は、追認することが出来るときから一定期間行使しない場合に時効により消滅します。
当該期間が、従来の6ヶ月から1年に伸長されました。
なお、追認(取消しできる行為を、後から確定的に有効とする意思表示)することができるときとは、消費者が誤認をしたことに気づいた時や困惑を脱した時等、取消の原因となっていた状況が消滅した時を指します。
最後に
今回の改正により、全体として消費者が契約の取消し・無効を主張できる機会が増えました。
消費者契約法には、消費者団体訴訟制度も定められています。自社の社会的信用にも関わってくることですから、法務担当者は消費者との契約において上記条項に触れる部分がないか注意することがより重要となったといえるでしょう。
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