ヘリコプター・オーナー商法疑いで3人を逮捕、預託法の規制について
2026/02/16   契約法務, コンプライアンス, 消費者取引関連法務, 消費者契約法

はじめに

「ヘリコプターなどを共同購入すれば賃料収入を毎月得られる」などとうたい販売預託商法をしていたとして、警視庁が一般社団法人「S.I.Net会」会長ら3人を逮捕していたことがわかりました。約270人から10億円ほどを違法に集めていた疑いが持たれているとのことです。今回は預託法が規制する販売預託商法について見ていきます。

 

事案の概要

報道などによりますと、S.I.Net会の会長や航空機販売会社「エスアイヘリシス」(杉並区)の社長らは2022年9月~23年12月にかけて、埼玉県の30~50代の男女2人との間で「ヘリコプターや小型飛行機の計7口の共同所有権を770万円で販売し、機体は同社が預かる代わりに毎月賃料を支払う」という内容の販売預託契約を締結していた疑いが持たれています。

共同所有権を販売するに際し、容疑者らは「自治体との協定に基づく災害時の物資輸送や遊覧飛行で機体を運用する」と説明していたとのことです。
事前の説明では、1口につき月6000円程度の賃料を支払うとしていたものの、23年のヘリコプター運用益は700万円程度で、とても事前の説明に沿った賃料が支払える状況になく、自転車操業だったと見られています。

なお、エスアイヘリシスは2024年5月に消費者庁から預託法に基づき措置命令を受けています。

 

販売預託取引とその規制

今回問題となったヘリコプターの販売預託取引。「販売預託取引」とは、事業者が商品を販売し、その商品は事業者がそのまま預かり事業者が預かった商品を運用してその利益を配当金として消費者に還元するという取引をいいます。

近年、この販売預託取引を利用した商法が問題視されており、悪質なケースでは、実際には商品は存在せず、運用利益もなく、事業者が自転車操業を行っており最終的に破綻し、多くの消費者に多額の損害を及ぼすといった例も報告されています。

これまでに問題となった事例として、金の地金を預託販売していた豊田商事事件が挙げられます。この事例では1982年から85年にかけて約2万9000人の被害者が発生し被害総額は約2000億円に上るとされています。また、子牛を商品としていた安愚楽牧場事件では被害者数が7万3000人に上り、被害総額も約4200万円となっています。

このように預託販売取引は膨大な数の被害者と巨額の損害を生じさせるリスクが高く、規制の必要性が高いスキームといえます。

 

預託法の令和3年改正

従来、旧預託法では被害が発生するごとに政令で指定する形で規制対象を拡大してきました。具体的にはダイヤモンドなどの貴石や真珠、貴金属、それらを用いた装飾品、盆栽や鉢植え、哺乳類や鳥類などの動物、自動販売機、動植物の加工品、家庭用治療機器などが対象とされています。

しかし、このような後追い規制では抜本的な消費者被害の予防に繋がらず、今後も新たな預託販売商法による被害が発生し続けることが予想されます。そこで、令和3年改正で全ての販売預託取引を原則として禁止し、例外的に内閣総理大臣(消費者庁)の厳格な確認を受けた場合に限り勧誘や契約の締結が可能となりました。

さらに、罰則や行政処分も強化されています。

 

預託法に違反した場合

上記のように現行預託法では販売預託取引を行うには内閣総理大臣(消費者庁)の確認を受ける必要があります。この確認を受けずに行った契約は無効となります。

また、行政処分も強化されており、業務停止命令が2年に伸長され、業者の役員等については業務禁止命令が新設されています。さらに、これらの行政処分の対象となる者が実質的に支配している法人等も特定関係法人として行政処分の対象となりました。

そして、罰則として確認を受けないで販売預託取引の勧誘や契約の締結をした場合は5年以下の拘禁刑、500万円以下の罰金またはこれらの併科となっています(32条1号)。また、法人に対しても5億円以下の罰金が規定されています(38条1項1号)。

 

コメント

本件でS.I.Net会とエスアイヘリシスの社長らはヘリコプターや小型飛行機を販売し、機体をそのまま預かって運用益を賃料として支払う契約を消費者と締結していた疑いが持たれています。これが事実であった場合、違法な販売預託取引に該当する可能性が高いと考えられます。消費者庁からは既に行政処分も出ているとのことです。

以上のように現行預託法では販売預託取引は原則として禁止されており、事前に消費者庁の厳格な審査と確認を受ける必要があります。なお、現時点で消費者庁から確認を受けた例は無いとされています。

商品の販売とリースをかけ合わせた形の商法を検討している場合にはこれらの規制を慎重に確認し、違法な販売預託商法とならないよう社内で周知していくことが重要といえるでしょう。

 

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