改正消費者契約法(2023年6月施行)の改正点まとめ
2023/05/11 コンプライアンス, 消費者契約法, 法改正

はじめに
2023年6月より消費者契約法が改正される予定です。消費者契約法は、消費者と事業者との間で締結される契約に関する法律であり、消費者が商品やサービスを購入する際に公正な取引条件や適切な情報を提供される権利を保護することを目的としています。本記事では今回の改正のポイントについて解説します。
消費者契約法とは
消費者契約法は、消費者の利益を保護し、不当な取引行為や不公正な契約条件を防止するために制定された法律です。現行の法律において、以下のような内容が規定されています。
■公正な取引条件の提供
事業者は商品やサービスの価格、品質、数量、提供期間などの重要な情報を適切に提供する責任があります。
■不当な契約条件の禁止
事業者は消費者に対して明示されていない追加料金や過度な違約金を求めるなど、不合理な契約条件を課すことが禁じられています。
■解除・返品の権利
消費者は一定の条件下で契約を解除したり、商品を返品する権利を有します。
■不当な取引行為の禁止
事業者は虚偽または誇大広告、強引な勧誘行為を行うことが禁じられています。
改正で変わるポイント
今回の改正では、具体的にどのような変更が行われるのでしょうか?様々な事項が追加される中、企業の努力義務も拡充されます。
1.契約の取消権を追加(第4条第3項)
消費者が取消権を行使できるケースとして、以下の3つの類型が追加されました。
・勧誘することを告げずに退去困難な場所へ同行し勧誘する類型
・威迫する言動を交え、相談の連絡を妨害する類型
・契約前に事業者が契約の目的物の現状を変更し、原状回復を著しく困難にすることで、消費者に対し、「もはや契約を結ぶしかない」と思わせる類型
2.解約料の説明の努力義務(第9条第2項)
事業者に対し、消費者から要求された場合に、解除料の算定の根拠を説明する努力義務が課されました。具体的には、解除料の設定時に使用した算定式や当該式を採用した理由、解除料の金額の妥当性の根拠などを説明することになります。
3.免責の範囲が不明確な条項の無効(第8条第3項)
改正前も、事業者に故意または重大な過失がある場合に、事業者の損害賠償責任を免除する条項は無効とされていました(改正前消費者契約法第8条第1項2号および4号)。
しかし、その旨を明示せず、どのような場合に事業者の損害賠償責任が免除されるのかが不明瞭な規定を設ける事業者が少なくありませんでした。
今回の改正により、損害賠償責任の一部を免除する契約条項を盛り込む場合、「事業者が軽過失の場合に限る」旨を明確に記載しない限り無効となります。
(無効となる例)法令に反しない限り、1万円を上限として賠償します
(有効となる例)軽過失の場合は1万円を上限として賠償します
4.事業者の努力義務の拡充
今回の改正では、事業者側が負う努力義務も拡充しています。
まず、事業者が消費者に契約締結の勧誘をする際、消費者の知識・経験に加え、「年齢・心身の状態」も考慮したうえで、契約の目的となるものの性質に応じて、契約内容についての必要な情報を提供することが努力義務として課されました。(第3条第1項第2号)
また、消費者に対し、解除権行使に必要な情報を提供する努力義務が課されています。(第3条第1項第4号等)
さらに、民法第548条の3第1項にて消費者に認められている「定型約款の表示請求権(定型約款の内容を知る権利)」の行使を担保するべく、消費者に対し、当該権利の行使に必要な情報提供を行う努力義務が課されました。(第3条第1項第3号)
加えて、適格消費者団体が事業者に対して、違法な契約締結の差止請求を行う前段階として行うことが多い、契約条項の開示要請に関し、当該要請に応じる努力義務が事業者側に課されています。(第12条の3第2項)
消費者契約法でのトラブル例
消費者庁には、消費者契約法に関連したトラブル相談が寄せられています。相談の多いものを一部、以下にて紹介します。
・インターネット回線やスマートフォンの通信契約の契約内容について「複雑で理解できない」中で契約締結に至った事例
・「虚偽説明」、「説明不足」、「サイドビジネス商法」など、主に事業者のセールストークに問題があった事例
・強引・強迫的な行為により「消費者を困惑させる勧誘」が行われ、契約を締結せざるを得なかった事例
・インターネット回線やスマートフォンの通信契約、モバイル通信契約などにおいて、「解約料」に関する十分な説明がなかった事例
消費者契約法に関連する消費生活相談の概要と主な裁判例等(消費者庁)
コメント
このように、改正消費者契約法の施行後は、消費者の保護が一層強化される見込みです。改正内容として、努力義務に留まる事項も少なくありませんが、コンプライアンスを推進する立場にある法務としては、努力義務にも対応できるよう準備を進めることが重要になります。消費者と締結する契約内容の見直し、現場で使用するトークスクリプトの改定指導など、法務が手腕を発揮する場面が増えそうです。
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