ブラック企業名 厚生労働省の新基準で公表
2015/07/09 労務法務, 労働法全般, その他

概説
つい先日、ABCマートが違法長時間労働により書類送検されたというニュースが流れた。この事件は、厚生労働省が今年4月に設置した、ブラック企業を取り締まるための特別チーム「過重労働撲滅特別対策班」(通称、「かとく」)による初めての書類送検ということもあり、注目を集めた。今回は、ブラック企業の企業名の公表の新基準という点について説明したい。
背景
ブラック企業の企業名の公表について、厚生労働省は5月18日より新基準を採用している。この新基準が採用される以前は、企業が長時間労働で法律違反した場合、労働基準監督署が是正を勧告し、勧告に従わない企業に限って書類送検し、社名が公表されていた。したがって、是正勧告に従ってさえいれば、度重なる是正勧告を受けたとしても企業名が公表されることはないということになる。今回の厚生労働省の新基準は、違法な長時間労働を繰り返す企業が多いことに対処するために、是正勧告の段階で企業名を公表することができるものとなっている。
厚生労働省の新基準
厚生労働省の新基準は、「長時間労働に係る労働基準法違反の防止を徹底し、企業における自主的な改善を促すため、社会的に影響力の大きい企業が違法な長時間労働を複数の事業場で繰り返している場合、都道府県労働局長が経営トップに対して、全社的な早期是正について指導するとともに、その事実を公表する」というものである。
①「社会的に影響力の大きい企業」とは、複数の都道府県に事業場を有している企業であって、かつ、中小企業基本法に規定されている中小企業に該当しないものをいう。
(中小企業基本法は、業種別に資本金額等と従業員数を基準に中小企業かどうかの定義を定めている。)
②「違法な長時間労働」とは、労働時間・休日・割増賃金に係る労働基準法違反が認められ、かつ、1ヶ月当たりの時間外・休日労働時間が100時間を超えていることをいう。
③「相当数の労働者」も要求される。具体的には、1箇所の事業場において、10人以上の労働者又は当該事業場の4分の1以上の労働者において,「違法な長時間労働」が認められる」ことをいう。
④「複数の事業場で繰り返している」とは、概ね1年程度の期間に3箇所以上の事業場で「違法な長時間労働」が認められることをいう。
コメント
世間からブラック企業との認定を受けたワタミは、14年度の新卒社員を予定の半数しか採用できず、業績も15年3月期の連結の営業損失が20億円を超えるなどの影響を受けた。このように、世間からブラック企業と認定されることは、経営に大きな悪影響を及ぼすものといえそうである。中小企業は今回の新基準の適用からは外れるが、例えば従業員が過労死して遺族が訴訟を提起するなど、この新基準の運用とは関係なく企業名が公にされるという可能性はあるといえよう。大企業や中小企業の区別なく、企業には、労働環境の実態を把握し、問題があれば改善していくという姿勢が求められる。
関連コンテンツ
新着情報

- 解説動画
斎藤 誠(三井住友信託銀行株式会社 ガバナンスコンサルティング部 部長(法務管掌))
斉藤 航(株式会社ブイキューブ バーチャル株主総会プロダクトマーケティングマネージャー)
- 【オンライン】電子提供制度下の株主総会振返りとバーチャル株主総会の挑戦 ~インタラクティブなバーチャル株主総会とは~
- 終了
- 視聴時間1時間8分

- まとめ
- 中国:AI生成画像の著作権侵害を認めた初の判決~その概要と文化庁「考え方」との比較~2024.4.3
- 「生成AIにより他人著作物の類似物が生成された場合に著作権侵害が認められるか」。この問題に関し...
- 弁護士
- 片山 優弁護士
- オリンピア法律事務所
- 〒460-0002
愛知県名古屋市中区丸の内一丁目17番19号 キリックス丸の内ビル5階

- ニュース
- フォークリフトを無資格で運転させ書類送検、労働安全衛生法の規制について2025.6.6
- 鹿児島県の畜産会社が無資格の従業員にフォークリフトを運転させ、同僚を怪我させたとして、労働基準...
- 弁護士
- 目瀬 健太弁護士
- 弁護士法人かなめ
- 〒530-0047
大阪府大阪市北区西天満4丁目1−15 西天満内藤ビル 602号

- 業務効率化
- LAWGUE公式資料ダウンロード

- 業務効率化
- Mercator® by Citco公式資料ダウンロード
- セミナー
茂木 翔 弁護士(弁護士法人GVA法律事務所/第一東京弁護士会所属)
- 【オンライン】暗号資産ファンドの最前線:制度改正と実務対応
- 終了
- 2025/05/29
- 12:00~13:00

- 解説動画
奥村友宏 氏(LegalOn Technologies 執行役員、法務開発責任者、弁護士)
登島和弘 氏(新企業法務倶楽部 代表取締役…企業法務歴33年)
潮崎明憲 氏(株式会社パソナ 法務専門キャリアアドバイザー)
- [アーカイブ]”法務キャリア”の明暗を分ける!5年後に向けて必要なスキル・マインド・経験
- 終了
- 視聴時間1時間27分