会社法改正、いよいよ来月施行へ!
2015/04/07   商事法務, 総会対応, 会社法, その他

会社法改正、来月施行

本年度2月6日に公布された「会社法の一部を改正する法律」(以下単に「改正会社法」とする)がいよいよ来月5月1日に施行される。既に12月期決算の上場企業においては株主総会が実施されているが、特にROE(自己資本比率)が低い上場企業ではトップ人事に反対する株主の声が急増した模様だ。急増した背景にはISS(Institutional Shareholder Services)の指導指針(*)の影響も多分にあると思われる。3月期決算6月株主総会の企業においては改正会社法が適用されることになるので人事の問題のみならず、株主総会参考書類、事業報告の記載事項に加えて、内部統制システムに関する事項も改正対象になっており、留意すべき点は多い。
 本稿では実務対応という観点から株主総会における留意点についてとりわけ、重要な点について述べるに留める。
*ISSとは米議決権行使大手のインスティテューショナル・シェアホルダー・サービスシーズのことをさし、今年2月、「ROEの過去5年間の平均と直近決算期がいずれも5%を下回る企業に対して、経営トップ選任の反対を推奨する」という指導指針を導入した。

株主総会における留意点

①社外取締役を置くことが相当でない理由の説明
 事業年度の末日時点で、監査役会設置会社(公開会社かつ大会社)で、有価証券報告書提出会社が、社外取締役を置いてない場合社外取締役を置くことが相当でない理由を説明しなければならない(改正会社法327条の2)。
 また、かかる事項は事業報告、参考書類への記載事項となっており(施行規則124条2項3項、74条の2)、社外監査役が二人以上あることのみをもって理由とすることができない。
 実務の対応としては、対象会社に該当する場合には「相当でない理由」の検討・決定をすることになるが、社外取締役を置くことがその会社にマイナスの影響を及ぼすような事情を説明することになろう。株主総会のどこで説明するのかも踏まえ、企業としては具体的理由を記載する手間を考えると、社外取締役を置く方向で検討すべきであろう。
②社外役員の要件厳格化
 社外取締役及び社外監査役の要件の厳格化が行われる。具体的には、社外取締役及び社外監査役ともに、株式会社の(1)親会社の業務執行者等、(2)兄弟会社の業務執行者等、(3)業務執行者等の近親者でないものであることが要件に追加されることになる。また、過去要件が緩和され、就任前10年間、業務執行取締役等であったことがないという形で規定されることになる。例えば、親会社の総務部長などを子会社の社外監査役として兼務させるようなケースもあるが、今後は親会社の人材を子会社の社外取締役や社外監査役とすることができなくなる。
 上記規定の変更に伴い、事業報告、参考書類への記載事項も変更される。ただし、経過措置規定があり、施行日時点で既に社外役員が設置されている場合、施行日を含む事業年度に係る定時株主総会(3月決算会社であれば、平成28年6月総会)までは、従前の例により、施行日以後新たに選任する社外役員の要件は改正後の規定によることになるので注意されたい。
 実務対応としては本年度総会に役員選任議案を出す場合、社外性要件について注意することは勿論、まだ、親会社出身者等の社外役員の任期がある場合には、来年度総会までの改選に向けて、検討を進める必要があろう。
③内部統制システムの整備
 改正法は、親子会社のガバナンス強化を目的として、当該会社のみならず、その子会社も対象としたグループ内部統制システム(企業集団内部統制システム)の整備義務を、会社法施行規則(会社法施行規則98条1項5号、100条1項5号、112条2項5号)における規律から会社法(改正会社法348条3項4号、362条4項6号、399条の13第1項1号ハ、416条1項1号ホ)における規律に「格上げ」した。これに伴い、改正会社法施行規則においては、取締役(会)設置会社におけるグループ(企業集団)内部統制システムの内容として、(1)当該株式会社の「子会社の」取締役等の職務の執行に係る事項の当該株式会社への報告に関する体制、(2)当該株式会社の「子会社の」損失の危険の管理に関する規程その他の体制、(3)当該株式会社の「子会社の」取締役等の職務の執行が効率的に行われることを確保するための体制、及び(4)当該株式会社の「子会社の」取締役等及び使用人の職務の執行が法令及び定款に適合することを確保するための体制(改正会社法施行規則98条1項5号イ乃至ニ、100条1項5号イ乃至ニ、112条2項5号イ乃至ニ)が含まれることが明示された。
 近時、株式会社とその子会社から成る企業集団によるグループ経営が進展し、株式会社およびその株主にとって、当該株式会社とその子会社から成る企業集団の業務の適正を確保することの重要性が増しているため、このような改正に至ったわけであるが、改正会社法施行規則98条1項5号に基づく決議の対象は子会社における体制そのものではなく、親会社において決議し事業報告に記載すべき事項は親会社としてどのような関与体制を構築しているかとなるので留意されたい。

コメント

 その他の会社法の改正点としては監査役等委員会設置会社の新設をはじめ、株主総会の事業報告との関係では責任限定契約等に係る改正、会計監査人の選人・解任・不再任に関する議案の内容決定権者の変更等が挙げられる。その中でも、新設された監査役等委員会設置会社については機関設計の視点から各企業も検討していることと思われる。
 従来の指名委員会等設置会社制度の採用会社が少なかったのは役員人事・報酬を社外取締役によって決定されることへの抵抗が大きかったことに理由があると言われており、新制度では役員人事権等を社内取締役に留保したまま、定款で定めることにより重要な業務執行の決定を取締役へ移譲可能であり、社外役員も最低2名ですむということにメリットがある。
 3月決算6月株主総会という上場企業が数多くある中、改正会社法が適用される初めての総会になるので、各企業改正会社法の内容には十分気をつけて準備して欲しい。

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