「実弟です」―問われる証券会社の品格と、実務家の手腕
2013/06/03 金融法務, 金融商品取引法, 金融・証券・保険

事案の概要
SMBC日興証券勤務の男性社員が昨夏、一人暮らしの認知症の女性の弟になりすまし、女性が別の大手証券会社に保有していた約5000万円分の投資信託を電話で不正に解約させていたことがわかった。資金は日興で扱う金融商品の購入に充てられた。金融庁は調査の上、同社を指導する方針だ。
男性社員は神奈川県の厚木支店で約2年前から女性を担当。昨年7月中旬から8月上旬にかけて私有の携帯電話などから大手証券2社に電話した。担当者と女性との会話が途切れるたびに男性社員が代わり、「実弟です」と偽って女性の資産状況などを確認し、会話を誘導したうえで解約させていた。
コメント
認知症などにより判断力が低下している顧客への金融商品の販売を巡っては、説明不十分などとして他の証券会社や銀行も訴訟を起こされている。しかし本人が被害を訴えるのは難しく、表面化することは少ないと言われている。認知症患者462万人と言われる時代。多額の財産を抱える老人が詐欺行為等に巻き込まれるリスクは当然高まるだろう。
これは裏を返せば、そこに法律実務家が絡む余地がある事を意味する。相続や信託などの財産管理関連法務の顧客は、もはや会社社長や地方のお金持ちに限られない。教育費用の相続税減免等とあいまって、その裾野は大きく広がっている。投資信託等の金融商品の管理に絡めば、社会貢献と両立できる実務家になれるかも知れない。
一方今回の事件によって、金融商品リテール業務のコンプライアンス体制の脆弱性が改めて浮き彫りとなった。厳しいノルマが課せられている証券会社社員。本事件のような法的リスクの発生は容易に予測できたはずである。会社の信頼低下は売り上げに直結する。営業利益や利便性を意識しつつも、説明責任を果たす体制や慎重な手続の整備などを通じて、法的リスク回避のために実務家が協力出来る事は山ほどある。
関連リンク
銀行員による投資信託の勧誘行為に不法行為を認めた事例
本件との直接的な関連性はない説明義務違反の事例であるが、会社顧問をされている方は、手始めに営業における説明義務違反のリスク回避について見直してみるのはみるのはいかがだろうか。
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