【特集】 第4回 社債の発行
2017/11/29   商事法務, 民法・商法, 金融商品取引法, 会社法

第1 はじめに

 こんにちは。企業法務ナビの企画編集部です。最終回になる今回は「社債の発行」についてをテーマにしてお送りしようと思います。
 社債とは、会社が行う割当によって発生する、会社に対する金銭債権(会社法2条23号)のこと、つまり、企業が資金調達のために発行する債券のことです。社債には、①普通社債、②劣後債、③永久債、④新株予約権付社債がありますが、投資家に定期的に利払いされるという点に変わりありません。では、社債の発行について見ていきましょう。

第2 社債発行による資金調達のメリット・デメリット

 まず、社債発行による資金調達のメリット・デメリットについて見ていきましょう。
 主なメリットとしては、金融機関から融資を受ける場合より資金調達がしやすいという点、また、株式と違い、社債発行をしても経営に干渉されないという点が挙げられます。
 主なデメリットとしては、株式と違い、借金であるので社債権者に弁済する必要がある点、また、事務手続きが増えることによるコストが増えるという点が挙げられます。
 メリット・デメリットに関しては以下のページが詳しく解説しています。

社債 -企業、投資家ともにメリット大で発行が急増(PRESIDENT ONLINE)

社債発行を行うメリットとデメリット(SAMURAI証券株式会社)

第3 社債の発行手続きについて

 社債を発行する場合の流れは以下のようになっています。

(1)社債発行の決定

    ↓

(2)募集事項の決定

    ↓        

(3)募集社債の申込み

    ↓

(4)募集社債の割当て

    ↓

(5)募集社員の払い込み

(1)まずは、社債を発行することを決定します。

(2)募集事項の決定は、取締役、取締役会で決定します(348条1項、362条4項5号)。

 決定すべき募集事項は、

①募集社債の総額

②各社債の金額

③利率

④払い込まれた金額の返済の方法と期限

⑤利息の支払い方法と期限

⑥社債券(社債の内容が書いてある紙)を発行する場合はその旨

⑦社債権者が記名式(社債原簿に社債を引き受けた者の住所と名前・名称を記載する方法)から無記名式(前記住所等を記載しない方法)へ、もしくは無記名式から記名式へ変更する請求をすることができない場合はその旨

⑧社債管理者(社債を引き受けた社債券者の利益を保護する立場から、債権の弁済を受領し、債権の回収を容易にするなど社債の管理をする者のこと)が制限なく裁判ができるかどうか

⑨払込金額

⑩払込期日等

が、あげられます。

(3)社債の申込みについては、投資家など社債の引受申し込みをしようとする者に対し、以上の決定事項を通知し(677条1項)、それを受けて、申込みをする者は氏名・住所・引き受ける社債の数と金額等を記載した書面を会社に提出します(同2項)。

(4)投資家から申込みが集まったら、会社はその中から実際に誰にいくら引き受けてもらうか決定します(678条1項)。

(5)そして、社債の募集が完了したときは、引き受けた者は払込期日(676条10号)に(4)で決めた社債の金額を払い込むことになります。

 詳しくは以下のウェブページを参考にするといいでしょう。

シリーズ<5>社債の活用①(株式会社インターナレッジ・パートナーズ IKP税理士法人)

第4 株式発行と社債の違い

 社債が株式発行と違う点については、社債はどの会社でも発行できる点や、社債には返済義務がある点など複数挙げられます。
 相違点について詳しいウェブページを紹介しておきます。

シリーズ<5>社債の活用①(株式会社インターナレッジ・パートナーズ IKP税理士法人)

第5 少人数私募債について

少人数私募債とは

 社債には公募債と私募債の2種類があります(金融商品取引法2条3項)が、少人数私募債は、この私募債のうち、50人未満の投資家に対して募集を行うものになります(同条同項)。このように、少人数私募債は、金融商品取引法の概念として整理されていますが、一般的には金融商品取引法の開示規制と会社法の社債管理者設置義務を回避するように設計された社債のことを指します。

※金融商品取引法の開示規制とは、有価証券の募集に該当した場合は、発行時と発行後に一定の情報開示をしなければならない(金融商品取引法4条1項、24条1項等)ことをいいます。

※会社法の社債管理者設置義務とは、前述したように、社債権者の利益保護という観点から、社債を発行した会社は会社法で社債管理者を設置しなければならない(会社法702条本文)ことをいいます。ただし、社債総額を社債1口の最低金額で割った数が50を下回る場合には社債管理者を設置する必要はありません(会社法702条但書、会社法施行規則169条)。つまり、少人数私募債の場合は設置する必要はありません。

少人数私募債のメリット

 少人数私募債は社債なので、株式と異なり、利払いによる資金調達コストは税務上損金に算入されるというメリットがあります。つまり、利払いによって得た金額については法人税を支払わなくて済みます。
 また、自治体によっては、少人数私募債の助成制度を実施しているところもあるようです。

計画性の求められる少人数私募債

 少人数私募債は社債に該当するので、募集事項を決定する必要があります(会社法676条)が、募集の対象がメインバンク等になるので十分な資金計画や事業計画を提示する必要があります。
 また、私募債によって得た金額を私募債を引き受けた者へ返済する期間は3年から5年程度と想定され、設備投資で利用される場合などでは資金回収のスパンが長くなるため、原資が回収できない可能性もあることを気に留めておく必要があるでしょう。
 私募債について、ここまで述べてきたことが詳しくまとめられたウェブページを紹介しておきます。

シリーズ<6> 社債の活用②-少人数私募債①(株式会社インターナレッジ・パートナーズ IKP税理士法人)

第6 おわりに

 以上、見てきたように、社債には株式発行と違ったメリットが多数あり、資金調達の手段として広く使われています。先日も、日本経済新聞(2017/10/18)の電子版によると、東京電力ホールディングスグループが、機関投資家向けに総額1000億円の普通社債を発行すると発表しました。
 このように、社債発行が資金調達の方法として選ばれることは多いと思われますが、法務部としては、上記の「社債の発行手続きについて」を参考にしつつ、手続に漏れがないか確認しましょう。
 また、少人数私募債を発行する場合についても、金融商品取引法の開示規制と社債管理者設置義務を回避するように設計されているか、また、内容まで踏み込んで計画性が妥当かについてもチェックすることが望ましいと考えられます。
 参考のために、少人数私募債発行のサンプルが載っているウェブページを紹介しておきます。

少人数私募債発行サンプル(鶴見建設経営コンサルティング)

東京電力ホールディングスグループの社債発行の件については以下のニュースを参照してください。

東電、総額1000億円の社債発行 (日本経済新聞)

 ここまで全4回にわたり、「企業による資金調達」というテーマで記事をお送りしてきましたが、いかがであったでしょうか。
 今回の特集が、法務担当者の一助になればと思います。 最後まで、お付き合い下さり有難うございました。

(文責:okumura)

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