犬肉不正密輸で有罪判決、検疫とは
2019/12/05 コンプライアンス, 民法・商法

はじめに
ベトナムから不正に犬の肉を密輸した罪に問われていた女に対し大阪地裁は2日、執行猶予付き有罪判決を言い渡していたことがわかりました。密輸量は約60kgに達するとのことです。今回は家畜伝染病予防法の定める検疫について見ていきます。
事件の概要
報道などによりますと、兵庫県姫路市に住むベトナム国籍のグエン・テイ・トウム被告(37)は今年、検査証明書のない犬の肉を3回にわたり計約60kgを不正に密輸した罪に問われております。同被告は「自分で食べたり技能実習生に売るために密輸した。見つかっても没収されるだけで罪になるとは思わなかった。」と供述しているとのことです。これまでにも何度も検疫所から警告を受けていたとされます。
家畜伝染病予防法と検疫
家畜伝染予防法では、家畜の伝染病や寄生虫の発生を予防し、蔓延することを防止するため一定の品目については輸出入に際して検疫を義務付けております。指定されている家畜伝染病は多岐にわたりますが、主に口蹄疫や狂犬病、豚コレラや鳥インフルエンザ、BSEなどが挙げられます。これらの伝染病等を防止するために事前に申告し検疫を受け、検疫証明書の交付を受ける必要があります。違反した場合は3年以下の懲役または100万円以下の罰金となっております(63条2号)。
指定検疫物
(1)動物検疫
輸出入の際に検疫が必要となる指定検疫物は大きく分けて動物、水産物、植物、畜産物に分けられます。また別途食品衛生法による食品検疫も存在します。まず動物検疫では、偶蹄類の動物、馬、犬、猫、兎、鶏、七面鳥、家鴨、ガチョウなどが挙げられております。偶蹄類とは蹄が2ないし4に別れた動物で牛や鹿、イノシシ、羊などを指します。これらの生体、死体、骨、肉、皮、卵、毛、蹄、滅菌処理されていないハム、ソーセージ、ベーコン、加工処理されていない血や脳や骨髄等も含まれます。
(2)水産物検疫
水産物検疫では食用、観賞用、研究用の魚類、貝類、甲殻類、熱処理等の加工がされていない冷凍・冷蔵のアワビ、牡蠣、エビ類などが挙げられております。
(3)植物検疫
家畜伝染病予防法とは別に植物防疫法で植物やその包装、有機質が混入した土などが検疫の対象となっております。これは国内の農作物や自然に対し大きな被害を及ぼす恐れのある病害虫や寄生植物の拡散を防止することを目的としています。
検疫の手続き
検疫の手続きは対象物によって違いはありますが、大まかに以下とおりとなります。①事前申告、②積荷目録の提出、③検疫申請、④検疫、⑤検疫証明書の交付となります(34条~40条)。必要な書面や手続き期間などが対象品目などによって異なるため農水省のホームページ等の参照をお勧めします。
コメント
本件でグエン被告は3回にわたり約60kgの犬肉を検疫を受けずに密輸したとされます。上記のとおり犬の肉も指定検疫物に該当しており、申告の上検疫を受ける必要があったと言えます。大阪地裁は量が多量で販売目的がうかがわれ、検疫所からの度重なる警告にも関わらず密輸を続けたとして懲役1年6ヶ月、執行猶予4年を言い渡しました。以上のように動植物や水産品、食品の輸出入に関して検疫の対象となっている品目は多岐にわたります。また対象に該当するかが曖昧で判断しにくいものも多いと言えます。輸出入を予定している品目で検疫対象の可能性がある場合には予め農水省などに問い合わせるなど事前に十分な対応を心がけることが重要と言えるでしょう。
関連コンテンツ
新着情報

- 解説動画
奥村友宏 氏(LegalOn Technologies 執行役員、法務開発責任者、弁護士)
登島和弘 氏(新企業法務倶楽部 代表取締役…企業法務歴33年)
潮崎明憲 氏(株式会社パソナ 法務専門キャリアアドバイザー)
- [アーカイブ]”法務キャリア”の明暗を分ける!5年後に向けて必要なスキル・マインド・経験
- 終了
- 視聴時間1時間27分

- まとめ
- 中国:AI生成画像の著作権侵害を認めた初の判決~その概要と文化庁「考え方」との比較~2024.4.3
- 「生成AIにより他人著作物の類似物が生成された場合に著作権侵害が認められるか」。この問題に関し...

- 業務効率化
- クラウドリーガル公式資料ダウンロード

- 解説動画
浅田 一樹弁護士
- 【無料】国際契約における準拠法と紛争解決条項
- 終了
- 視聴時間1時間
- 弁護士
- 並木 亜沙子弁護士
- オリンピア法律事務所
- 〒460-0002
愛知県名古屋市中区丸の内一丁目17番19号 キリックス丸の内ビル5階
- 弁護士
- 水守 真由弁護士
- 弁護士法人かなめ
- 〒530-0047
大阪府大阪市北区西天満4丁目1−15 西天満内藤ビル 602号

- セミナー
藤原 鋭 氏(西日本旅客鉄道株式会社 法務部 担当部長)
西﨑 慶 氏(西日本旅客鉄道株式会社 法務部)
藤原 総一郎 氏(長島・大野・常松法律事務所 マネージング・パートナー)
板谷 隆平(MNTSQ株式会社 代表取締役/ 長島・大野・常松法律事務所 弁護士)
- 【2/19まで配信中】CORE 8による法務部門の革新:JR西日本に学ぶ「西日本No.1法務」へのビジョン策定とは
- 終了
- 2025/02/19
- 23:59~23:59

- 業務効率化
- Legaledge公式資料ダウンロード

- ニュース
- コロナ社にカヤバ社、下請業社への金型無償保管で公取委が勧告/23年以降15件目2025.4.28
- 金型保管をめぐる下請法違反の事例が相次いでいます。 暖房機器などの製造・販売を行う「株式...