JX金属が東邦チタニウムを完全子会社化、株式交換とは
2026/03/05 商事法務, 総会対応, 会社法, エネルギー関連

はじめに
半導体素材などの開発・製造を手掛ける「JX金属」が株式交換によって「東邦チタニウム」を完全子会社化する方針であることがわかりました。簡易株式交換の手続きによるとのことです。今回は会社法の株式交換について見直していきます。
事案の概要
報道などによりますと、JX金属は2月25日の取締役会で株式交換により東邦チタニウムを完全子会社化することを決めたとされます。既存事業の強化やサプライチェーンの安定化、新規事業の拡大などが狙いとのことです。
今後の予定としては、2月25日に臨時株主総会の基準日公告(3月12日が基準日)、4月24日に東邦チタニウムで臨時株主総会開催、5月27日東邦チタニウム株最終売買日、同月28日上場廃止、6月1日に株式交換の効力発生となっています。
なお、東邦チタニウムが手掛けている金属チタン事業は分社化し、既存株主で主要取引先でもある日本製鉄が資本参画することを検討しているとされています。
株式交換とは
株式交換とは、買収する側の企業が相手企業の株主に自社の株式を交付して相手企業の株式を100%取得し完全子会社化するという組織再編行為の一種です。吸収合併と異なり子会社となる会社は消滅せずそのまま存続することから影響や負担が小さく、また親会社となる会社にとっても対価として金銭を用意しなくてもよいというメリットがあります。
また、M&Aに反対の株主を別途スクイーズアウトで締め出す必要がなく、簡易な手続きで対象会社の株式を100%確保できる制度となっています。似た制度に株式移転と株式交付というものも存在しており、株式移転とは親会社となる会社を新設して子会社となる会社の株式を100%移転するというものです。
一方、株式交付は完全親子会社関係ではなく、あくまでも親子会社となることを目的とした制度となっています。こちらは現物出資規制を受けることなく株式を対価として子会社となる側の株式を取得できる点に特徴があります。
株式交換の手続きの流れ
株式交換の大まかな手続きとしては、まず取締役会による決議と相手会社との株式交換契約の締結から始まります。その後上場会社や一定の要件を満たす会社は適時開示と公取委などへの事前届出を行います。次に事前開示書類を備え置き、必要な場合には債権者保護手続きや反対株主の株式買取手続きを行います。
株式交換も組織再編行為の一種であることから原則として両当事会社で株主総会の特別決議による承認を要します。そして株式交換契約で定めた効力発生日に完全親子会社となります。
その後、必要な場合は登記を行い、事後開示書類を備え置くこととなります。なお株式交換は吸収合併等とは異なり株主が変動するだけであることから原則として債権者異議手続きは不要で、新株予約権付社債が完全親会社に承継される場合と完全親会社が交付する対価に株式以外のものが含まれる場合に必要となります。
また、登記についても合併や分割と異なり株式交換自体は登記事項とはなっておらず、新株予約権の処理があった場合のみ登記が必要となります。
簡易・略式株式交換
上でも触れたように株式交換を行うには原則として株主総会の特別決議による承認が必要となります。しかし一定の場合にこの承認決議を省略することが可能です。
まず、完全親会社となる会社が子会社となる会社の株主に交付する対価が純資産額の5分の1以下である場合、親会社となる会社側の承認決議を省略することが可能です。これを簡易株式交換と言います。
これは交付する対価が大きくなく、会社および株主への影響が小さいことから株主による承認を省き、スピーディなM&Aを可能にすることが趣旨となっています。
ちなみに、この場合でも一定数の株主が反対の意思を表明した場合は省略できません。
次に相手会社が自社の議決権の90%以上の株式を保有している場合も株主総会による承認決議を省略できます。これを略式株式交換と言います。
承認決議には出席株主の議決権の3分の2以上の賛成を要しますが、相手会社が90%以上保有している場合は可決することが確定しており株主総会を招集する意味がないからです。
しかし、略式株式交換の場合でもやはり例外が存在し、完全親会社となる会社が対価として交付する株式が譲渡制限株式である場合がこれに当たります。子会社側が公開会社であり種類株式を発行していない場合、そして親会社側が非公開会社である場合です。
子会社側にとっては譲渡制限が設けられることと等しく、また親会社側では譲渡制限株式を第三者割当することと同様だからです。
コメント
本件でJX金属による東邦チタニウムの完全子会社化に際し、今年4月24日に東邦チタニウム側の臨時株主総会が招集され承認決議を得る予定とされています。今回は簡易株式交換であることからJX金属側では臨時株主総会は招集されない予定とのことです。その後上場廃止を経て6月1日に完全子会社化が完了する見通しです。
以上のように、相手会社の株主に交付する対価が純資産額の5分の1以下である場合は株主総会での承認決議を省略することができます。
また、相手会社が自社の株式の9割を保有する特別支配会社である場合も同様に省略が可能です。完全子会社化ではなく親子会社化で十分である場合は別途株式交付という制度も近年導入されており、金銭を交付することなく子会社化も可能となっています。
M&Aを検討する際には会社法上どのようなスキームが用意されているか、またそれぞれのメリット・デメリットを十分に吟味し選択していくことが重要と言えるでしょう。
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