再販売価格の拘束疑いでルックスオティカジャパンに立入検査 ー公取委
2025/11/26 コンプライアンス, 行政対応, 独禁法対応, 独占禁止法

はじめに
公正取引委員会が19日、サングラスの人気ブランド『レイバン』などを販売するルックスオティカジャパン株式会社(千代田区)に対し立入検査を行っていたことがわかりました。再販売価格の拘束の疑いとのことです。
今回は独禁法が禁止する再販売価格の拘束について見直していきます。
事案の概要
レイバンやオークリーなどの人気サングラスブランドを持つイタリアの「ルックスオティカグループ」の日本法人、ルックスオティカジャパン株式会社。報道などによりますと、ルックスオティカジャパンは数年前から小売店に対し、これらの人気商品を希望小売価格以下で販売しないよう求め、一定割合を超える値引き販売を制限していた疑いがあるとされます。
また、新作商品について、価格の比較が容易で値下げが起きやすいオンライン販売を数カ月間行わないよう求めていた疑いもあるとのことです。
両ブランドのサングラスの価格帯は2万~4万円が中心で、小売店による値下げ販売によるブランド価値の低下や値崩れを回避する狙いがあったと見て、公取委は実態解明を進める方針とされます。
再販売価格の拘束とは
独禁法2条9項4号イでは、「自己の供給する商品を購入する相手方に、正当な理由がないのに」「その販売する当該商品の販売価格を定めてこれを維持させることその他相手方の当該商品の販売価格の自由な決定を拘束すること」を再販売価格の拘束としています。
これは不公正な取引方法の一種として独禁法で禁止されています(19条)。具体的にはメーカーが小売店や量販店に対し、メーカー希望小売価格よりも低い値段で販売しないことを条件に製品を販売するなど、相手方の自由な販売価格の決定を拘束する行為が該当します。単に「メーカー希望小売価格」を参考価格として表示するだけでは原則として該当しません。
これに違反した場合は排除措置命令(20条1項)や課徴金納付命令(20条の5)が出される可能性があります。課徴金納付命令は過去10年間に同様の違反行為によってこれら処分を受けた事業者が対象です。
また、排除措置命令に違反した場合は罰則として2年以下の拘禁刑、または300万円の罰金とされ(90条3号)、法人に対しても3億円以下の罰金となっています(95条1項2号)。
再販売価格の拘束の要件
独禁法2条9項4号では「正当な理由」なく再販売価格の拘束を行うことを禁止しています。公取委のガイドラインによりますと、再販売価格の拘束によりブランド間競争が促進され、需要が拡大し、それにより消費者の利益が増進するといった場合には、必要な範囲、必要な期間の範囲で正当な理由が認められるとされています。
また、再販売価格の拘束は事業者の何らかの人為的手段によって価格拘束の実効性が確保されている必要があるとされます。この点についても、事業者が提示した価格で販売することが文書または口頭による契約で定められている場合、流通業者に同意書を提出させた場合、取引の条件として提示し、条件を受諾した業者とのみ取引をする場合、売れ残った商品は値引き販売せずに買い戻すことを条件とした場合などが挙げられています。
なお、再販売価格の拘束の対象となるのは自社の製品であって、役務・サービスの場合は別途拘束条件付取引の対象となります。
著作物に関する例外
上でも触れたように「正当な理由」がある場合は再販売価格の拘束は許容されています。そして、それ以外にも一定の著作物に関して例外的に再販売価格の拘束が認められています(23条4項)。これを再販売価格維持制度と言います。
具体的には書籍、雑誌、新聞、レコード盤、音楽用テープ、音楽用CDが対象です。
これは独禁法の1953年改正によって認められたもので、出版物等は全国の店舗で同一価格で流通させていくことが重要な商慣行となっており、そのために一律価格による販売が認められています。
コメント
本件でルックスオティカジャパンは、自社が販売する「レイバン」「オークリー」といった人気サングラスについて、小売店に自社が定めた価格よりも安く売らないよう指示していた疑いが持たれています。
仮に、指示に従わない場合、相手方小売店に不利益がある旨を示唆する等、実効性を確保する行為があった場合には「再販売価格の拘束」に該当すると判断される可能性は高いと考えられます。
このように独禁法では、自社製品を卸した相手方の自由な価格決定を阻害する行為を「再販売価格の拘束」として禁止しています。単にメーカー希望小売価格を示すに留まる場合は問題ないと判断されることが多いですが、何等かの方法でそれに従わせる場合は問題となりえます。
自社が取引相手に販売価格を指定していないか、今一度社内で周知して予防しておくことが重要と言えるでしょう。
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