東京地裁がツイート画像を著作物と認定、著作権法の著作物について
2025/10/14   知財・ライセンス, 著作権法, IT

はじめに

ツイッター(現X)の投稿をスクリーンショットした画像を無断転載されたとして、投稿者が、転載したアカウントの利用者に対して損害賠償を求めていた訴訟で9日、東京地裁が約40万円の支払いを命じていたことがわかりました。

ツイッター(現X)の投稿は著作物に当たるとのことです。

 

事案の概要

報道によりますと、原告は令和5年に自身のアカウント画像と過去に投稿した特定の俳優を応援するツイート内容をスクリーンショットされ、インターネット掲示板などに転載されたうえ、被告に「発想がイミフ(意味不明)」などと揶揄されたとされます。

これを受け、原告は「自身のツイートをスクリーンショットされ転載されたことは著作権侵害に該当する」として、被告に対し約200万円の損害賠償を求め東京地裁に提訴していました。

 

著作権と著作物

今回の訴訟では、ツイッター(現X)での投稿やアカウント画像のスクリーンショットの天才が著作権侵害に当たるかが争点となりました。

著作権は著作物を創出した時点で自動的に発生し、その取得のために何ら手続きを必要としないとされます。登録によって権利が発生する特許権や実用新案権と大きく異なるところと言えます。
それでは著作物とはどのようなものを言うのでしょうか。著作権法2条1項1号によりますと、著作物とは「思想又は感情を創作的に表現したものであって、文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属するものをいう」とされています。

この要件に該当するものを創作した者が著作者であり、著作物に関する著作権を獲得することとなります。小説や論文、音楽や絵画、彫刻や映画など様々なものが該当すると言えます。

著作権には様々なものがあり、上演や上映する権利、複製する権利、テレビやラジオなどで公衆送信する権利、展示や貸与、翻訳する権利など様々な権利が認められています。以下、その著作物の要件について見ていきます。

 

著作物の要件

上でも触れたように著作権法2条1項1号では著作物の要件が定められています。それによりますと著作物と認められるための要件は、(1)思想または感情が含まれていること、(2)創作したものであること、(3)表現したものであること、(4)文芸、学術、美術または音楽の範囲に属するものであることとなっています。

まず、思想・感情、つまり人間の考えや気持ちが込められている必要があるとされ、単なるデータや事実は該当しないとされています。そのためAIが生成したものは原則として著作物に該当しませんが、人がAIを使って創作したものは該当すると考えられています。

そして著作物は創作したものである必要があります。これは創作者の個性が表現されたものでなくてはならず、他人のものを模倣しただけであったり、挨拶のようにありふれた内容のものは該当しません。

そしてそれが人の五感で感知できる形に表現されている必要があります。

4つ目の要件として、文芸や学術、美術、音楽の範囲に属するものとされていますが、厳密にこれらに限定されているわけではなく、人の文化的活動の範囲であれば良いとされています。

 

著作権侵害と引用

他人の著作物を許可なく利用したりすると著作権侵害となります。具体的には著作物の無断複製や無断公衆送信、無断上映、無断翻訳などが挙げられます。

このような著作権侵害行為に対しては差止請求や民事上の損害賠償請求ができ、また刑事罰として10年以下の拘禁刑、1000万円以下の罰金などが規定されています(119条)。

このように著作権者に無断で利用する行為は原則として著作権侵害となりますが、例外的に個人で楽しむ範囲内でのコピー(私的使用)や、一定の条件の下教育機関で利用する場合は例外的に許容されています。

また、適法に引用する場合もその例外の一つと言えます。著作権法32条1項によりますと、「公表された著作物は、引用して利用することができる。この場合において、その引用は、公正な慣行に合致するものであり、かつ、報道、批評、研究その他の引用の目的上正当な範囲内で行われるものでなければならない」としています。

すでに公表されている著作物について、公正な慣行に合致し、正当な範囲であれば適法な「引用」として許容されるということです。

 

コメント

本件で東京地裁は、ツイッター(現X)での投稿やアカウント画像は「個性が表れたものといえ、思想や感情を創作的に表現したもの」として著作物に該当すると認めました。その上で約40万円の支払いを命じています。

ちなみに、同様の事例として2021年にツイート投稿のスクリーンショットを転載され発信者情報開示を求めた訴訟で、東京地裁と東京高裁も著作物に該当するとしました。ただし、「引用」にも当たり得るともしています。

以上のように、近年インターネットの普及に伴ってツイートなどの発言の切り抜きや転載などが頻繁に行われるようになり、このようなトラブルも頻発しています。どのような場合に著作権侵害に該当するのか、それに対しどのような対処ができるのかを把握して、備えておくことが重要と言えるでしょう。

 

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