業界団体が「わかもと製薬」に是正指導、公正競争規約とは
2025/06/12 コンプライアンス, 広告法務, 景品表示法, 医療・医薬品

はじめに
取引先の病院の院長を社用車で送迎するなどの接待を繰り返していたとして、「わかもと製薬」(東京都中央区)が業界団体から是正指導を受けていたことがわかりました。
送迎は10年以上続いていたとのことです。
今回は、業界自主規制ルールである公正競争規約について見ていきます。
事案の概要
報道などによりますと、わかもと製薬は2013年10月から24年4月にかけて、近畿地方の病院の院長に対し、自宅と病院の間や病院と他の医療機関の間の送迎を繰り返していたとされます。
実際に送迎していたのは、病院担当の支店の歴代支店長や医薬情報担当者だったとのことです。
これに対し、業界団体の「医療用医薬品製造販売業公正取引協議会」は、公正競争規約違反に当たるとして同社に是正指導を行いました。
同社による継続的な送迎行為が「便宜、労務、その他の役務」に該当し、相手が有力な取引先の院長であったことから、医薬品の取引を不当に誘引する手段として行われたとのことです。
公正競争規約とは
景表法36条1項によりますと、事業者または事業者団体は内閣総理大臣および公正取引委員会の認定を受けて、不当な顧客の誘引を防止し、一般消費者による自主的かつ合理的な選択および事業者間の公正な競争を確保するための協定または規約を締結し、設定することができるとされています。
これが公正競争規約と呼ばれるものです。
事業者や業界団体が一般消費者の利益を保護するために自主的に設定するルールと言えます。
商品に過剰な景品や不当な表示を無制限に行えば、公正な取引や消費者の適切な判断を阻害するということです。
たとえば、ある事業者が1万円の景品を商品に付与した場合、競争業者は2万円、3万円と景品の過当競争が行われることになります。
また、果汁が10%のジュースについて「果汁たっぷり」と表示すれば、他社も「しぼりたて果汁」などと表示内容がエスカレートしていくことになります。
このような不当表示や過大景品を未然に防ぐことが目的となっています。
公正競争規約の内容
消費者庁のHPによりますと、公正競争規約で定めることができる内容は、表示または景品類に関する事項に限られますが、これら以外にも規約を運用するために必要な組織や手続きに関する事項を定めることも可能です。
具体例として、
(1)必要な表示事項を定めるもの:原材料名、内容量、賞味期限、製造業者名等の表示を義務付け
(2)特定事項の表示の基準を定めるもの:不動産広告の徒歩による所要時間は80メートルにつき1分換算といった基準
(3)特定用語の表示を禁止するもの:加工乳および乳飲料には「牛乳」の用語を使用しないこと
などが挙げられています。
具体的な内容については、それぞれの業界での商慣習に基づいて定めていくこととなります。
公正競争規約の認定要件
公正競争規約は、上でも触れたように認定を受ける必要があります。
公正取引委員会および消費者庁長官は、公正競争規約の設定または変更の認定についての申請を受けた場合、必要に応じてパブリックコメントを募集するなどして、消費者、関係事業者、学識経験者等の意見を聴いた上で、その規約の内容が要件に適合するかを判断します。
具体的な要件は、
(1)不当な顧客の誘引を防止し、一般消費者による自主的かつ合理的な選択および事業者間の公正な競争を確保するために適切なものであること
(2)一般消費者および関連事業者の利益を不当に害するおそれがないこと
(3)不当に差別的でないこと
(4)公正競争規約に参加し、または脱退することを不当に制限しないこと
とされています。
コメント
消費者庁の発表によりますと、令和5年の時点で公正競争規約は表示規約が66件、景品規約が37件、合計103件となっています。
公正競争規約はあくまで自主規制であるため、参加していない事業者には適用されません。
これに参加するのも脱退するのも自由ですが、参加した場合は法的な拘束力を受けることとなります。
本件でわかもと製薬が行っていたとされる病院の院長への継続的な送迎が「便宜、労務、その他の役務」に該当するとして、医薬品の取引を不当に誘引する手段と認定され、再発防止の指導が求められたとされています。
このように業界での自主規制ルールに参加することによって、それを守る義務が発生しますが、それを守っている限りは原則として違法とはならないと言えます。
また、一般消費者からもルールを遵守する企業として信頼を得ることができます。
未加入の場合は、積極的な参加を検討することも重要と言えるでしょう。
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