公取委が九州シジシーに警告、再販売価格の拘束とは
2025/03/21 コンプライアンス, 独禁法対応, 独占禁止法, 食料品メーカー

はじめに
沖縄県内のスーパーなどにプライベートブランド商品を供給している「九州シジシー」が店頭で販売する際の最低額を小売店から同意を得ていたとして公取委が警告していたことがわかりました。最低額を下回ったら引き上げるよう要請していたとのことです。今回は独禁法の再販売価格の拘束について見直していきます。
事案の概要
報道などによりますと、「CGC」のロゴが入ったプライベートブランド商品を沖縄県内の小売店などに供給している九州シジシーは販売価格の下限を設定して示し、それ以上の価格で販売することを取引先小売業者から同意を得ていた疑いがあるとされます。また取引先小売業者がその下限価格未満で販売していた場合、販売価格を下限以上に引き上げるよう要請していたとのことです。これらの行為は独禁法が禁止する再販売価格の拘束に該当するおそれがあるとして、公取委は九州シジシーに対し、同様の行為を行わないよう警告したとされます。
再販売価格の拘束とは
独禁法2条9項4号によりますと、自己の供給する商品を購入する相手方に、正当な理由がないのに、当該商品の販売価格を定めてこれを維持させることその他販売価格の自由な決定を拘束することを再販売価格の拘束として禁止しております。また取引の相手方がさらに卸す小売業者に対しても価格を維持させるように拘束する場合も含まれます。メーカーが製品を卸売業者に卸す際に○○円以上で販売するよう求めたり、また卸売業者がさらに小売店に卸す際にも同様の条件を付けるよう要求するといった場合です。これにより価格競争が抑制され、市場での公正な競争が阻害されることとなります。違反した場合は排除措置命令(20条1項)や、課徴金納付命令(20条の5)を受ける可能性があります。なお排除措置命令に違反した場合は2年以下の懲役または300万円以下の罰金、法人には3億円以下の罰金となっております(90条3号、95条1項2号)。
再販売価格の拘束の要件
再販売価格の拘束では、まず自由な価格決定を拘束する必用があります。メーカーがメーカー希望小売価格や標準小売価格を設定するだけでは該当しません。「拘束」とは必ずしもそれに従うことを契約上の義務として定められている必用はなく、従わない場合に何らかの経済上の不利益を伴うことによってその実効性が確保されていれば足りると言われております(最判昭和50年7月10日)。実際に拘束が認められた事例でも、営業担当者による小売店の巡回、試買による価格・転売状況の確認、秘密番号聖による転売経路の確認等が行われていたものがあります(勧告審決平成3年8月5日)。再販売価格の拘束では、「正当な理由がないのに」と規定されていることから、拘束行為があれば原則として公正競争阻害性も認められると言われております。
正当な理由
上でも触れたように再販売価格の拘束は正当な理由なく行われた場合に違法となります。つまり正当な理由が認められる場合には適法ということです。ではどのような場合に正当な理由が認められるのでしょうか。この点公取委のガイドラインによりますと、(1)再販売価格の拘束をすることにより競争促進効果が生じてブランド間競争が促進されること、(2)それにより当該商品の需要が増大し、消費者の利益の増進が図られること、(3)当該競争促進効果が、再販売価格の拘束以外のより競争阻害的でない他の方法によっては生じ得ないこと、(4)再販売価格の拘束が必用な範囲および必用な期間に限られること、を満たす場合に正当な理由が認められるとされております。また最高裁は「専ら公正な競争秩序維持の見地からみた観念であって、当該拘束条件が相手方の事業活動における自由な競争を阻害するおそれがないこと」とも判示しております(最判昭和50年7月11日)。いずれにしても認められるのはかなり限定的な場合のみと言えます。
コメント
本件で吸収シジシーは最低価格を設定して小売店に販売する際に同意を得、またその価格を下回っていた場合は価格を引き上げるよう要請していたとされます。従わない場合は取引の継続が難しくなるなど不利益も考えられ、再販売価格の拘束行為に該当する可能性は高いと言えます。公取委の警告を受けた同社は、警告を真摯に受け止め再発防止に務めるとしております。以上のように独禁法では自社製品を販売する際、一定以上の価格で販売するといった条件を付ける行為を禁止しております。正当な理由がある場合は適法となりますが、上でも触れたように認められる要件は非常に限定的と言えます。価格競争の末に自社製品の低廉化を招くことを恐れることも理解はできますが、小売店等の価格決定の自由を阻害することがないよう社内で周知しておくことが重要と言えるでしょう。
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