日大元理事ら背任事件の初公判で無罪主張
2025/03/19 契約法務, コンプライアンス, 危機管理, 刑事法, 教育、学習支援

はじめに
日本大学付属板橋病院の建て替え工事計画や医療機器の納入取引で、日本大学に不当な支払いをさせて約4億2千万円の損害を与えたとして、背任罪に問われている日大元理事の男と、医療法人「錦秀会」元理事長の男(以下、「病院元理事長」)の初公判が3月10日に開かれました。2人はいずれも無罪を主張しました。
日大に約4億円の損害を与えたか
報道などによりますと、検察側は冒頭陳述で、日本大学の契約業務を担う関連会社「日本大学事業部」の取締役だった日大元理事が病院の建て替え工事を巡り、自身の意向に沿う設計業者を選定したと指摘したといいます。また、設計業者を通じて業務実体のない病院元理事長側の会社に利益の半分を得させ、その一部を還流させる計画を立てたということです。
板橋病院を巡る逮捕当時の報道では、2021年春以降に約14億6300万円のリース契約で海外メーカーのMRI、CT、血管撮影装置が7台導入されたと報じられています。
この取引の中で、仲介させる必要がないにも関わらず、病院元理事長の会社を間に入れ、日本大学側に約1億3100万円の不要な債務を負担させ損害を与えた疑いが持たれています。
また、電子カルテ関連機器の納入についても、同じ手口で約6700万円を負担させ日本大学側に合わせて約2億円の損害を与えたとして、2人は2021年10月に逮捕され、その後起訴されています。
ちなみに、これらの取引後、錦秀会の関連会社から日大元理事の知人の会社に、計2回、合わせて約2700万円が送金されたといわれています。
その他にも、病院の建て替え工事設計監理業務を巡り日本大学から設計事務所に支払われた着手金約7億円のうち約2億円を病院元理事長の会社に流出させたとされています。
今回の裁判で、日大元理事と病院元理事長の2人は、一連の病院建て替え工事や医療機器などの調達で約4億2千万円の損害を日本大学に与えたとして背任罪に問われています。
3月10日の初公判で2人は起訴内容を否認し無罪を主張しました。弁護側は、2人は日本大学のために事務を処理する立場になく、大学側に損害も生じていないと指摘。背任の故意がなく、共謀もしていないため背任罪は成立しないと訴えました。
なお、この事件で、病院元理事長らと取引がある業者からリベートを受け取ったにも関わらず、所得を申告しなかったとして、日本大学の元理事長が所得税法違反(過少申告)に問われていました。元理事長は2022年4月に有罪判決が確定しましたが、2024年に病気のため死去しています。
背任罪の構成要件について
背任罪の構成要件を満たすかが争点となっている今回の裁判。背任罪の構成要件は以下とされています。
・「他人のためにその事務を処理する者」であること
金銭や商品、企業秘密の管理など財産に関する業務を委託された者を指します。
・自己もしくは第三者の利益を得ること、または本人に損害を加えることを目的(図利加害目的)としていること
第三者に利益を得させたり、会社に損害を与えることが目的の場合に成立します。そのため、行為者自身の利益が目的でなくても成立します。
・事務を任された者として、任務に背く行為を行ったこと
「任務に背く行為」とは委託者から与えられた任務に法的に背いた行為のこと。不正融資や不良貸付なども含まれます。
・行為の結果、本人に財産上の損害を与えたこと
目的・行為があったうえで、委託者に財産上の損害が発生した場合に成立します。ここには将来的に得られるはずだった利益が失われた場合も含まれます。
コメント
日本大学大は事件後、今回の被告2人らに対し、民事で損害賠償請求訴訟を起こしています。訴額は11億円を超え、現在も係争中です。
また、逮捕された元理事長に代わり、新理事長がガバナンス強化を行っています。この事件を教訓とし、契約業務や財務管理における内部統制の重要性を改めて認識する必要があるといえます。
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