フジ・メディアHDの社外取締役が招集請求、取締役会について
2025/01/23 商事法務, 会社法

はじめに
フジテレビを傘下に持つフジ・メディア・ホールディングスが21日、臨時取締役会を23日に開催することを明らかにしました。同社の社外取締役が開催を求めたとのことです。今回は取締役会とその招集等について見ていきます。
事案の概要
報道などによりますと、フジ・メディアHDは監査等委員会設置会社で取締役は17人、そのうち2人が常勤、3人が非常勤の監査等委員とされます。現在フジテレビはタレントの中居正広氏をめぐる問題で揺れており、17日に同社社長らが定例会見の形で記者会見を開いたものの、参加できた報道機関もラジオ・テレビ記者会加盟社とNHK等に限られ、動画撮影は禁止、写真も冒頭のみに制限されるという内容で批判が高まっております。これを受けフジ・メディアHDの監査等委員で連結子会社であるフジテレビの監査役も兼任している社外取締役が臨時取締役会の招集を請求したとのことです。同取締役は臨時取締役会において公表すべきことが決議された場合は速やかに公表するとしております。
取締役会とは
取締役会とは、すべての取締役で構成される機関で業務執行の意思決定や各取締役の監督、代表取締役の選定および解職する権限を有しております(会社法362条2項)。取締役会は原則として設置は任意です。しかし公開会社、監査役会設置会社、監査等委員会設置会社、指名委員会等設置会社は設置が義務付けられております(327条1項各号)。取締役会設置会社は一定の重要事項については取締役会決議による決定を必要とし、各取締役に決定を委任することができないとされております(362条4項)。具体的には(1)重要な財産の処分および譲り受け、(2)多額の借財、(3)支配人その他重要な使用人の選解任、(4)支店等の設置および廃止、(5)募集社債に関する重要事項の決定、(6)内部統制システムの構築等となっております。
取締役会の招集
取締役会は原則として各取締役に招集権限が与えられております(366条1項)。しかし定款や取締役会決議で招集権者を決めておくことも可能です。この場合でも他の取締役は招集権者に会議の目的を示して招集請求ができ、5日以内に請求日から2週間以内の日を開催日とする招集通知が発せられない場合は自ら招集することも可能です(同2項、3項)。これ以外にも一定の場合での監査役や株主、監査等委員会が選定した者等も招集できる場合があります。招集通知は開催日の1週間前までに行う必要がありますが、定款で短縮することも可能です(368条1項、2項)。通知方法も特に制限は無く、電話やメール、LINE等でも可能です。この点株主総会の場合は招集通知時期も2週間前までにする必要があり、また一定の場合には書面や電磁的方法が必要となるなど厳格な点に注意が必要です。
取締役会決議
取締役会決議は原則として議決に加わることができる取締役の過半数が出席し、出席取締役の過半数の賛成で可決となります。この定足数と決議要件は定款で加重することも可能です(369条1項)。この議決権の行使に関して、取締役全員が書面または電磁的記録で同意し、監査役(設置会社の場合)が異議を述べない場合は決議があったものとみなすことができる旨、定款で定めることも可能です(370条)。また議決権に関して、特別利害関係人である取締役は行使できないとされます(369条2項)。たとえば代表取締役を解職する旨の議題や競業取引・利益相反取引の承認に関する議題の場合の当該取締役などが該当します。この場合、当該特別利害関係人である取締役を除外した取締役の人数を基礎として定足数を出すこととなります。なお特別利害関係人が参加した決議は無効とされておりますが、当該取締役を除いても結果が変わらない場合は有効との説もあります。
コメント
本件で、フジ・メディアHDの定款によりますと、「本会社の取締役会は、法令に別段の定めがある場合のほか、取締役会長が招集し、その議長となる」とし「招集通知は、各取締役に対し、会日の3日前までに発する」としております。そのため原則として取締役会長以外の取締役は必要がある場合は原則として取締役会長に招集請求をすることとなります。本件では監査等委員である取締役であり、社外取締役でもある取締役が招集請求を行ったとされます。なお同社では会社法370条の書面決議の規定も定款に置かれております。以上のように取締役会設置会社では、会社法にその招集や決議方法、決議要件などについて詳細な規定を置いております。株主総会決議と異なり、法令の規定に違反した決議は原則無効と考えられております。取締役会設置会社や設置会社に移行を予定している場合はこれらの規定にも留意して手続を確認しておくことが重要と言えるでしょう。
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