拡大しつづける不正競争防止法
2011/06/20 法改正対応, 不正競争防止法, 法改正, その他

不正競争防止法改正の背景
今年5月31日、不正競争防止法改正案(法律第三十号)が 国会を通過し、6月8日から施行されている。今回の主な改正点は、①刑事訴訟における裁判手続において非公開特例の設置②不正競争防止法において規制対象とするアクセスコントロール回避装置の範囲を拡大するとともに、回避装置の販売など提供行為に対して刑事罰の導入、である。
不正競争防止法は平成21年の改正においても営業秘密侵害罪の構成要件(処罰対象行為の追加・目的要件の緩和(不競法21条1項各号))を拡張し、営業秘密の保護の強化を図ってきた。今回の改正は、被害企業側が裁判で企業秘密を公表されることを恐れて告訴できないという実情に鑑み、訴訟手続においても営業の秘密を保護するものである(①)。
また、現在のIT化・ネットワーク化の進展は、営業秘密の侵害を容易にするとともに、一度侵害されれば瞬時にして拡散し、企業に回復不能な損害を与えうる状況である。これに対してアクセスコントロール回避装置の範囲を拡大し、インターネットによる様々なアプローチからの営業秘密の侵害を防止するものである(②)。
営業の秘密を死守せよ!
国際競争はIT化が激化しており、これに勝ち抜くためには、企業間における営業秘密の相互利用というアプローチが重要な要素となる。一方でネットワーク通信技術が発展するにつれて、不正な行為により秘密管理体制が突破されるという事案が多発し、社会問題となっている。
また、アメリカ、ドイツ、イギリスなどの諸外国に比べて日本の処罰の介入時期は遅れており、グローバル企業にとっては日本が営業秘密のセキュリティホールとなり、外国法人が日本での活動や日本法人との提携を嫌う動きもある。
このように国際競争において、営業の秘密は死守されねばならず、営業の秘密の侵害については厳重な規制が要求されている。
いたちごっこの末に・・・
不正競争防止法は改正に次ぐ改正を重ね、規制の拡大・厳重化がなされており、それらは、上記の需要にこたえるものである。しかし、このままいたちごっこを続けて今後もその規制をやみくもに広げていいのだろうか。経済産業省は裁判公開原則、被告人の防御権、内部告発者の対象除外等に配慮していると添え、今回の法案を提出しているが、明文による具体的な規制等はなく、裁判官の運用や、企業の倫理感に期待するなど、現場の運用方法に委ねられている。今後、被告人の人権についての具体的な調整がなされることが期待される。
【関連リンク】
- 『不正競争防止法の一部を改正する法律案について』経済産業省(リンク切れ)→アーカイブ
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