商品出荷拒否をめぐる、婦人靴アマガサとクルーズグループとの訴訟で判決
2024/04/25 契約法務, IT, 物流

アマガサとクルーズ、商品出荷拒否をめぐる一審訴訟に決着
婦人靴の卸売、小売などを行う株式会社アマガサが、保管・管理を委託していた自社商品の出荷を拒否されたなどとして、運営会社をはじめとするクルーズグループ各社に損害賠償を求めた訴訟で、4月22日、東京地方裁判所はアマガサ側の主張を一部認める判決を下しました。
訴訟の経緯
ノンレザー素材のシューズブランドをプロデュースするアマガサ。自社商品の保管・管理に関し、CROOZ EC Partnersとの間で物流委託契約を締結し、同社は相模原SHOPLIST物流センターでこれらを保管管理していました。しかし、2020年6月下旬以降、CROOZ EC Partnersが商品の出荷を拒否したことから、アマガサは春夏物商品の販売ができなかったといいます。
そのため、アマガサは出荷拒否された商品5万足以上の即時引き渡しを求め、2020年8月4日に動産引渡仮処分命令を申し立てました。結果、裁判所で和解が成立。8月26日までに全品引渡しを受けたといいます。
その後の9月3日、アマガサは、クルーズ・CROOZ EC Partners・CROOZ SHOPLISTの3社に対し、春夏物の出荷時期を逸してしまったことによる逸失利益等として、約9400万円の損害賠償を求める訴訟を東京地方裁判所に提起しました。
これに対し、クルーズ側は出荷拒否の事実はないと反論。「アマガサのいう“出荷拒否”は、アマガサがCROOZ EC Partnersからの取引条件見直し、取引継続の要請に応じず、一方的に物流委託基本契約を中途解約し、全機材・全商品を他社に移管したいと申し出た結果生じたもの」として、物流委託基本契約の残存期間に関わる業務委託料等の約4億4800万円の支払いをアマガサに求める訴訟を逆に提起しました。
こうした双方の主張に対し、東京地方裁判所は4月22日、CROOZ EC Partnersに対し、160万19円及びこれに対する2020年9月24日から支払済みまで年3分の割合による金員をアマガサに支払うよう命じました。なお、アマガサ側・CROOZ EC Partners側が行った、その他の請求については、いずれも棄却となっています。
物流委託契約とは
今回の裁判で争点となった物流委託契約。この物流委託契約は、3PL契約(third-party logistics agreement)とも呼ばれる契約で、物流業務の依頼企業が物流業者に対し、荷物の運搬・配送・出入庫・保管・品質管理・検品・梱包などを委託するものです。
いわゆる“物流のアウトソーシング”と呼ばれるもので、企業が物流に関する全てまたは一部の業務を委託することで物流品質の向上、繁忙期・閑散期の影響抑制、コスト削減などの効果が期待できるとして活用されてきました。
こうした物流委託契約により物流の円滑な運用が期待できる一方、契約内容などをめぐり、委託元と委託先がトラブルとなる事例がしばしば発生しているといいます。
具体的には、契約で取り決めた委託内容に追加して別の業務を依頼する場合などに金銭トラブルに陥るケース、運用の効率化を目指した合意内容が委託元と委託先とで認識が異なり、契約が適切に履行されないなどのケースがあるとのことです。
こうしたことから、国土交通省は3PL契約書を作成するにあたってのガイドラインを策定しました。ガイドラインには、事故があった際の対応や、解除の方法などについて記載されており、具体的な適用の仕方について、適切な方法を検討するよう呼びかけています。
コメント
判決の詳細については続報が待たれるところですが、CROOZ EC Partners側の請求が全て棄却されていることから、物流委託契約の解約自体は適切に為されたと判断されたものと予想されます。
物流委託契約の解約をめぐっては、特にトラブルが生じやすいといわれていますが、解約権の付与対象、解約予告期間や禁止期間、違約金額などを契約締結時点で詳細かつ適切に設定しておくことが重要になります。
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登島和弘 氏(新企業法務倶楽部 代表取締役…企業法務歴33年)
潮崎明憲 氏(株式会社パソナ 法務専門キャリアアドバイザー)
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