全国初、東京都がカスハラ防止条例制定を検討
2024/04/23   労務法務, 行政対応, ハラスメント対応法務, 労働法全般

都が全国初のカスハラ防止条例制定へ


「カスタマーハラスメント」いわゆるカスハラを防ぐため、東京都は全国初のカスハラ防止条例の制定を検討しています。4月22日、東京都は、専門家などがカスハラ対策などの議論を行う部会を開催し、条例でカスハラの定義やカスハラに該当する具体的な行為の例示を行うことを了承しました。こうした条例制定の動きの背景には、近年におけるカスハラの増加があります。

 

3月には議員がCAへのカスハラ疑惑で炎上


近年増加しているといわれるカスハラ。3月には、自民党の長谷川岳参院議員が、飛行機内で客室乗務員に対しクレームを言っていたとする告発が行われ、その態度の横柄さに「カスタマーハラスメントではないか」と批判される事態となりました。
長谷川氏を接客したという現役の乗務員からの匿名の手紙には、長谷川氏が非常に高圧的で、「飛行機の到着の遅れに対し、鬼の首を取ったような言い方でクレームを入れる」などの訴えが記されていたといいます。長谷川氏は、一部は事実と異なると否定しつつ、「飛行機の出発・到着時刻の遅れが生じる場合、正しい情報を伝えるべき」と乗務員に発言したことは認めました。

客が店側に対して、過剰な要求を行ったり、商品やサービスに不当な言いがかりをつけるカスタマーハラスメント。
クレームが、商品や接客態度・システムなどに対する不平不満にとどまるうちは、後の商品・サービス・オペレーションの改善に繋がるなど、店側にとっても一部有益なところがあるため、クレームを伝える行為自体はそれほど問題視されません。

しかし、クレームを伝える際に、従業員に対して過度に精神的ストレスを感じさせる言動が伴われた場合、それが従業員の心身の不調、モチベーションの低下、ひいては離職の原因にもなるなど、企業にとっての損失は多大なものとなります。

 

カスハラの増加と法規制


一般的に、カスハラは接客業などで多くみられると言われていますが、自治体の窓口などでも市民からの嫌がらせを受けることが多いという統計もあります。中には、職員の個人情報を特定し、インターネットで検索のうえ、SNS上で公開するといった悪質な手口もみられるそうで、その対策として、自治体職員が業務中に着用する名札に名字のみを表記する自治体も増えているといいます。

同じハラスメントの一種である“パワハラ”については労働施策総合推進法、“セクハラ”や“育児・介護に関するハラスメント”については男女雇用機会均等法や育児・介護休業法と、現在、多くのハラスメントが具体的な法令により規制の対象となっています。その一方で、カスハラについては現状、具体的な法律による規制はありません。

こうした中、東京都は全国初のカスハラに関する防止条例を制定するべく、検討を進めているといいます。条例を制定し、カスハラを定義することで、消費者に対しどのような行為がカスハラに該当するのかを認識させる狙いがあるということです。

では、どのような場合に“カスハラ”と判断されるのか?東京都が案として検討している具体例は以下のとおりです。

〇 カスハラに該当する
子どもの誕生日ケーキに記載された名前が間違えていたケースで・・
・店員の胸倉をつかみ、1億円を要求
・丁寧な口調で1億円を要求
・店員の胸倉をつかみ3000円の返金を要求

× カスハラに該当しない
子どもの誕生日ケーキに記載された名前が間違えていたケースで・・
・丁寧な口調で3000円の返金を要求

ただし、カスハラに該当するか否かの最終的な判断は企業・店側に任されると予想されています。現実の運用では、判断の難しいケースも多いと考えられ、どこまでうまくいく線引きできるのか心配する声もあります。

 

コメント


相手が顧客であることもあり、対応が難しい、カスタマーハラスメント。厚生労働省は、そのカスハラに関し、カスタマーハラスメント対策企業マニュアル(厚生労働省)を策定しています。

そこでは、カスハラを「顧客等からのクレーム・言動のうち、当該クレーム・言動の要求の内容の妥当性に照らして、当該要求を実現するための手段・態様が社会通念上不相当なものであって、当該手段・態様により、労働者の就業環境が害されるもの」と定義し、カスハラへの該当の有無をクレーム内容の妥当性、クレームの手段・態様の相当性の2点から判断するとしています。

また、厚生労働省は2023年9月に「心理的負荷による精神障害の認定基準」を改正し、労災の認定基準となる「業務による心理的負荷評価表」にカスタマーハラスメントを追加しています。

国や行政も問題視し始めたカスタマーハラスメント。従業員に対する安全配慮義務を果たし、従業員の心身を守るためにも、企業側は十分な対策を行う必要があります。

 

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