LGBT社員へのハラスメントと予防策
2023/02/13   労務法務, 労働法全般

はじめに


岸田首相の前秘書官が同性婚をめぐり「見るのも嫌だ」などと発言し更迭されたことを受けて、与野党双方からはLGBTの人たちへの理解を促進するために議員立法の早期成立を求める声が上がり、強まっています。一方で、企業においても、LGBTの社員を支援する取り組みが始まっています。
 

LGBTとは


「LGBT」とはレズビアン(女性同性愛者)、ゲイ(男性同性愛者)、バイセクシュアル(両性愛者)、トランスジェンダー(心と出生時の性別が一致しない人)の英単語の頭文字を取った言葉で、性的マイノリティの総称でもあります。また、性的指向が決められない・分からないクエスチョニングなどを含めた「LGBTQ+」と言われることも増えてきました。

このほかにも、SOGI(ソジ)とよばれる性的指向(sexual orientation)と性自認(gender identity)の頭文字をとった言葉もあります。これは特定の性的指向や性自認の人のみを対象とするのではなく、異性愛者を含めたすべての人を含む表現です。

日本には性的マイノリティの人たちが1割ほどいるといわれていて、企業においてもLGBTQ+だと公表する社員も増えてきています。

世間一般での理解が進んでいく一方で、LGBTQ+であることで、自身が職場でいやがらせを受けたり、いやがらせを受けている場面に遭遇したという人も少なくないとされています。実際、職場でLGBT関連のハラスメントを受けたり見聞きしたりした人の割合は22.9%と、5人に1人以上の割合だったということです。

 

「自分が受けたことがある(LGBT当事者・非当事者問わず)」1.3%
「直接見聞きしたことがある」7.6%
「間接的に聞いたことがある」15.3%
日本労働組合総連合会 LGBTに関する職場の意識調査


また、別の調査では、ジェンダーを理由にパワーハラスメント行為を受けた人や、容姿や外見について性的な冗談を言われ不快な気持ちになったという声も集まっています。

ある調査では、「男性として入社したものの、勤務開始後しばらくして性同一性障害であることを申し出、女性として扱ってもらえるよう事業主に要請したところ、一部の職員から無視や暴言等が行われるようになり、職場の雰囲気が悪くなった。さらに、管理者から“職場の雰囲気が悪くなったのはあなたの責任だ”などと指摘された。」という事例も紹介されていました。

ジェンダーを理由としたハラスメントの発生は、他のハラスメント同様に防止しなければなりません。

 

就業規則の変更


こうしたジェンダーを理由としたハラスメントが起こる背景には、多くの企業において、いまだLGBTQ+に対する社内方針が明らかにされていないことが理由の1つとして挙げられます。

・ジェンダーに関わるハラスメント行為は許されないこと
・ハラスメント行為者に下される処罰

などを明確に定めることが効果的と言われています。厚生労働省が公表するモデル就業規則では、従業員の服務規律として、性的指向や性自認に関するハラスメントを禁止する規程例を掲載しています。

 


Ⅱ.職場と性的指向・性自認をめぐる現状(厚生労働省)
 

また、「労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律」の第10条で、国は、労働者が持つ能力を有効に発揮できるよう必要な労働施策を定めなければならないとしています。そして、同条に基づいて策定された労働施策基本方針では、「多様性を受け入れる職場環境の整備を進めるため、職場における性的指向・性自認に関する正しい理解を促進する」と明記されています。

企業として、就業規則を見直す以外にも、例えば、

(1)LGBTQ+への理解を深めるための研修・啓発活動の実施
当時者がどのようなことで悩んだり、困難と感じているかの周知
(2)ジェンダー関連の相談窓口の設置
ハラスメントや職務での困りごと、改善して欲しいことなどを相談できる窓口を設ける

などの施策を行い、ジェンダーに関わらず、誰もが安心して働く環境を用意することも重要です。

また、採用希望者がLGBTQ+であることも十分に想定されます。性的マイノリティであることが原因で採用を見送られたり、管理職への登用がされなかったといった事態が発生しないよう、経営陣や採用担当者など、全社的にLGBTQ+への理解を深めていく必要があります。

 

コメント


日本にも1割ほどいるとされているLGBTQ+。周囲の無理解への懸念から、公表できない人も多いと言われています。公表している人はもちろんのこと、公表できていない人も安心して働けるよう会社として制度を整えることが重要になって来ます。

もし、まだ未着手でしたら、全社への啓もうという観点から、まずは、就業規則の変更から取り組んでみてはいかがでしょうか。

 

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