約2万5000人の配達員との業務委託契約終了を受け、配達員らがヤマト運輸本社前で抗議活動
2024/01/11 契約法務, 労務法務, 労働法全般, 物流

はじめに
配達業務を委託している個人事業主 約2万5000人との業務委託契約を今月末までに終了するとしているヤマト運輸。1月9日、配達員や労働組合関係者ら約100人が撤回を求めて本社前に集まり抗議活動を行いました。配達員らを支援する労働組合は、労働委員会に救済を求めています。
1月末までに2万5000人と契約終了
ヤマト運輸株式会社では、メール便や小型荷物について、「クロネコメイト」と呼ばれる個人事業主に配達を委託する契約を結んでいますが、この契約を1月31日までに全て終了し、従来までのメール便などの配達業務を日本郵便に委託するとしています。
この決定を受けて配達員など約100人が都内にあるヤマト運輸の本社前で抗議活動を行いました。
ヤマト運輸の配達員の一部が加入する労働組合「全日本建設交運一般労働組合(以下、「建交労」)」は個人事業主の配達員について、会社の指揮監督を受けて働いているため、労働組合法上の労働者に当たると指摘していますが、ヤマト運輸側は、個人事業主は法律上の労働者にあたらないことを理由に団体交渉を拒否しているということです。
個人事業主の労働者性については、2022年11月25日に、東京都労働委員会がウーバーイーツの運営会社に対し、配達員らの労働組合との団体交渉に応じるよう命令しています。また、アマゾンの個人事業主配達員に対する労災が認定されるなど、近年、契約形態のみならず、働き方の実態からも労働者性を判断する動きがあります。
こうした流れも受け、建交労は去年10月末に、東京都労働委員会に救済を申し立てています。
ヤマト運輸 クロネコメイトの皆様へ(全日本建設交運一般労働組合)
労働委員会の救済制度とは
建交労が救済を申し立てを行った労働委員会は、労働者の団結権の擁護および労働関係の公正な調整を図るため、労働組合法に基づき1946年3月に設置された独立行政委員会です。
労働組合および労働者は、不当労働行為を受けた場合に、労働委員会に対して救済申立てを行うことができます。
不当労働行為の救済制度は、大きく分けて「不当労働行為の禁止」と「不当労働行為の救済」の2つのポイントに分かれています。
その一つである「不当労働行為の禁止」に、団体交渉の拒否についての項目が明記されています。
○正当な理由のない団体交渉の拒否(労働組合法第7条第2号)
・当該企業で働く労働者以外の者が労働組合に加入していることを理由とする団体交渉の拒否 ・使用者が形式的に団体交渉に応じても、実質的に誠実な交渉を行わないこと(不誠実団交) |
救済の申し立てがあった場合、労働委員会は調査を開始します。労働委員会は広く裁量を持っており、個々の事案に応じて適切な是正措置を決定し命令する権限を有するとされています。そして、調査の結果、申し立てに“理由がある”と認めると、不当労働行為の類型に応じた救済命令を出します。
救済命令の内容については、厚生労働省が発表する文書に、以下のような具体例が記載されています。
「解雇について原職復帰と賃金差額の支払(バック・ペイ)等を命じ、団体交渉拒否について誠実な団体交渉を命じ、支配介入について特定の支配介入行為の禁止を命ずる等。また、今後同様の行為を行わない旨の文書を事業場内に掲示すること(ポスト・ノーティス)等を命ずることもある。」
なお、救済命令は行政処分に当たります。
コメント
物流業界では、「2024年問題」として運転手の残業規制が強化されることもあり、個人事業主に配達業務を委託するケースが増えています。一方で、個人事業主には労働法規による保護が十分に及ばないという問題があります。
ヤマト運輸側は、個人事業主に対して契約年数に応じた謝礼金(3万~7万円)の支払いを提示しているといいますが、ヤマト運輸からの発注で生計を立てている配達員も少なくなく、交渉は難航する見通しです。
2024年問題に加え、近年見られる最低賃金上昇の動きも個人事業主の増加を加速させるといわれています。欧州連合(EU)では、一定の条件下でギグワーカーを「従業員」として保護するための議論が行われているといいますが、日本においても、同様の議論を本格的に開始する必要がありそうです。
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