「西堀ローサ」運営会社が解散へ、解散のメリット・デメリット
2023/11/22 商事法務, 総会対応, 会社法

はじめに
新潟市の地下街「西堀ローサ」を運営する新潟市の第三セクター「新潟地下開発」が2025年10月までに解散することが正式に決まりました。株主総会で全会一致による承認がなされたとのことです。今回は会社の解散とそのメリット・デメリットについて見ていきます。
事案の概要
報道などによりますと、新潟市の地下街西堀ローサはピーク時の売上高が50億円を超えていたとされますが、大和や三越など百貨店の撤退が相次ぎ、近年は7期連続の赤字となっていたとされます。また空調が故障するなどの老朽化も進み、新潟市からの借入金9億円の返済も困難であるとして解散を検討していたとのことです。運営会社である新潟地下開発は20日午前に株主総会を開催し、新潟市を含む株主4者が出席し異論なく解散が承認されたとされます。西堀ローサ内には現在も約30のテナントが入っており、同社は2025年10月までに退去することを求める方針です。
会社の解散と解散理由
会社は解散することによって清算手続に入り、業務の結了、債権債務の精算、残余財産の分配などを経て法人としての会社が消滅することとなります。それではどのような場合に解散することとなるのでしょうか。会社法471条には会社の解散事由が列挙されており、(1)定款で定めた存続期間の満了、(2)定款で定めた解散事由の発生、(3)株主総会の特別決議、(4)合併による消滅、(5)破産手続開始決定、(6)裁判所による解散命令・解散判決、(7)休眠会社のみなし解散となっております。破産や解散命令など業績悪化や外部からの要因によって解散を余儀なくされる場合もありますが、株主総会によって能動的に解散することも可能ということです。なお休眠会社のみなし解散とは、最後の商業登記をした後12年間登記が無い場合に公告がなされ、2ヶ月経過によって解散したものとみなされます(472条)。この場合の解散登記は登記官が職権で行うこととなります。
株主総会決議による解散手続
上記のように解散事由はいくつかありますが、ここでは株主総会による解散の手続きの流れを見ていきます。まず株主総会で解散する場合、特別決議による承認が必要です。特別決議は議決権で過半数の株主が出席し、出席株主の3分の2の賛成が必要です。次に解散と清算人の登記を行います。清算人は定款または株主総会で定めなかった場合は取締役がそのまま清算人となります(法定清算人478条1項)。登記の際の登録免許税は解散分が3万円、清算人選任分が9000円となります。登記所での登記の他に税務署や市税・県税事務所、年金事務所はハローワークへの届け出も必要です。そして清算人は財産目録と貸借対照表を作成し、債権者に債権の申し出をするよう公告を行い、個別の債権者へ催告も行います。債権・債務の精算を行い、残余財産が有れば株主に分配します。株主総会に精算事務報告と決算報告書を提出し、承認されたらこの時点で会社の法人格が消滅することとなります。最後に精算結了登記を行って終了となります。
解散のメリット・デメリット
会社の事業が休止したり停止している場合でもそのままでは会社自体は存続しています。そのような場合、休眠会社として放置しておくべきか、解散してしまうべきかが問題となることがあり得ます。ここで解散せずに存続させるメリットとしては、再び事業を再開するのが容易であり、また解散手続や解散費用がかからないという点が挙げられます。一方で休眠会社であっても解散していない以上、売上が無くても法人住民税は発生し、また確定申告やその他商業登記なども必要となってきます。上でも触れたように12年間登記がなければ解散擬制ということもありえますが、取締役の任期は伸長していても10年まで(非公開会社)となっており、役員の変更があれば2週間以内に登記しなければ代表取締役に100万円以下の過料が課されることもありえます。解散すればこのような手間やコストが回避できます。会社を存続させるにも解散するにもメリット・デメリットが存在すると言えます。
コメント
本件で西堀ローサを運営する第三セクター新潟地下開発は来年10月までに解散するすることが決定しました。7期連続赤字に加え、施設の老朽化もあり借入金の返済の目処も立たないことから解散となりました。今後はテナントの退去や精算を行っていく見通しです。以上のように会社法では倒産や吸収合併等以外に株主総会による自発的な解散が認められております。事業が停止している場合は休眠会社として存続させることも選択肢となりますが、解散して整理してしまうこともできます。どちらにもメリットデメリットがありその時の実情などを踏まえて解散するかどうかを検討していくこととなります。どのような選択肢があるか、またどのような手続きが必要かを把握し、常に備えておくことが重要と言えるでしょう。
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