「ハイアス・アンド・カンパニー」が「くふう住まい」の子会社に、三角株式交換とは
2023/11/16   商事法務, 戦略法務, 会社法

はじめに
住生活コンサルティングを手掛ける「ハイアス・アンド・カンパニー」は14日、株式交換によって「くふう住まい」の完全子会社となり上場廃止となると発表しました。対価は親会社株とのことです。今回は三角株式交換について見ていきます。
事案の概要
報道などによりますと、株式会社「くふうカンパニー」とその完全子会社である株式会社「くふう住まい」は連結子会社であるハイアス・アンド・カンパニーをくふう住まいの完全子会社とるす株式交換する旨取締役会で決議をしたとされます。ハイアス社の株主に交付される対価は親会社となるくふう住まいではなく、その親会社であるくふうカンパニーの株式とのことです。12月中旬を予定している両社の定時株主総会で承認決議を得る予定とされ、2024年1月30日付で上場廃止となる見通しです。グループの一体化による経営効率化と迅速な意思決定を可能とする体制構築により企業価値向上を図る目的とされます。株式交換比率は1:0.31でハイアス側株主にくふうカンパニー株式やく6百万株が交付される予定です。
株式交換とは
株式交換とは株式会社が特定の会社を完全子会社化するためのM&Aのスキームの一つです。完全親会社となる会社が完全子会社となる会社の株式を全て強制的に取得し、完全子会社となる会社の株主にはその対価として完全親会社となる会社の株式を交付します。これにより特別決議による承認決議だけで少数株主の保有する株式も全て取得でき、別途スクイーズアウトを行う必要がありません。また対価は自社の株式で良いことから、多額の買収資金を用意する必要もなく機動的にM&Aを実施することが可能です。さらに吸収合併と異なり両当事会社での株主の構成が変化するだけで、両社は独立性を保っており事業運営への影響も小さいと言えます。
三角株式交換とは
上記のように株式交換では完全子会社となる会社の株主には完全親会社となる会社の株式が対価として交付されるのが一般的です。しかし対価として完全親会社となる会社のさらに親会社の株式を交付することも可能です。このような株式交換を三角株式交換と言います。2007年施行の会社法から株式交換の対価の柔軟化が図られ、親会社となる株式以外の対価が可能となったことにより実現しました。この完全親会社となる会社の親会社は外国会社であっても良く、外国企業による日本企業のM&Aにこの三角株式交換を利用することも可能と言えます。今年2月には同様の手法でサイアス株式会社が米国サイアス・インク社を完全親会社とする組織再編を行っております。
株式移転とは
株式交換と同様に完全親会社化を目的とするM&Aのスキームとして株式移転があります。株式移転は既存の株式会社を1社または複数社、完全子会社とする目的で完全親会社となる会社を設立し、その会社に完全子会社となる会社の株式を取得させ、その対価として設立する会社の株式を完全子会社となる会社の株主に交付するというものです。これは複数の会社のグループ化する場合、またはホールディングス化する場合に利用されます。株式移転も株式交換と同様に対価が株式で良いことから多額の買収資金を用意する必要がなく、また議決権の3分の2以上の賛成で達成でき、少数株主のスクイーズアウトを別途必要としないというメリットがあります。
コメント
本件でくふう住まいは株式交換の手法によってハイアス・アンド・カンパニーを完全子会社化し、上場廃止となる旨発表しました。その際の対価はくふう住まいの株式ではなく、その完全親会社であるくふうカンパニーの株式とされます。またこのくふうカンパニー自体もくふう住まいと株式会社ロコガイドを完全子会社とするために株式移転によって設立された会社とのことです。これによりそれぞれの会社の開発力やネットワーク、ノウハウを相互活用し企業価値を高めていくとしております。以上のように会社法では様々なM&Aの手法が用意されており、それぞれに手続きやメリット・デメリットがあります。それらを組み合わせることによって柔軟な組織再編が可能です。どのような手法があるかを普段から確認し、準備していくことが重要と言えるでしょう。
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宮本 由枝(株式会社ブイキューブ 管理本部 法務グループ) 坂巻 玲奈(株式会社ブイキューブ 営業本部 ウェビナーソリューション営業グループ 第3チーム チームリーダー)
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 加藤 賢
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