令和6年4月から施行、「労働条件明示」のルールについて
2023/09/19 労務法務, コンプライアンス, 労働法全般

はじめに
2024年4月から労働条件明示のルールが改正される予定です。就業場所や有期契約の更新上限などの明示が必要となります。今回は改正された労働条件明示ルールについて見ていきます。
労働条件明示ルールの改正
令和4年度労働政策審議会労働条件分科会報告を踏まえ、今年3月30日に労働基準法施行規則5条を改正する厚労省通達(基発0330第1号)が出されました。労働条件通知書に明示すべき事項が追加され、明示のタイミングも規定されております。この中でも特に重要と思われるのが有期労働契約の更新上限の有無です。有期労働契約を締結しようとする労働者にその後の無機転換の可能性などを含めた予測可能性を与える趣旨とされます。来年2024年4月1日から施行される予定です。以下改正点の概要を具体的に見ていきます。
労働条件の明示
労働基準法15条によりますと、「使用者は、労働契約の締結に際し、労働者に対して賃金、労働時間その他の労働条件を明示しなければならない」としております。具体的には労働基準法施行規則5条に規定されており、絶対的明示事項として(1)労働契約の期間、(2)有期労働契約の場合の更新基準に関する事項、(3)就業場所と従事すべき業務、(4)始業・就業時刻や時間外労働の有無・休日や休暇に関する事項、(5)賃金に関する事項、(6)退職に関する事項が挙げられております。それ以外にも相対的明示事項として、退職金に関する事項や賞与、労働者に負担させるべき食費、作業用品等に関する事項、安全衛生に関する事項、職業訓練に関する事項、災害補償、表彰等に関する事項、休職に関する事項が挙げられております。これらを明示した書面を交付するのが原則ですが、労働者の希望により電子メール等も可能です。
全ての労働者に対する明示事項
今回の改正で追加された事項のうち、全ての労働者に対する明示事項として、就業場所・業務の変更の範囲の明示があります。全ての労働契約の締結と有期労働契約の変更のタイミングごとに、「雇い入れ直後」の就業場所・業務の内容に加え、これらの「変更の範囲」についても明示が必要となるとされます。たとえば「(雇入れ直後)渋谷営業所(変更の範囲)都内23区内の営業所」や「(雇入れ直後)経理(変更の範囲)法務の業務」といった具合です。在籍出向の場合で出向先での就業場所や業務が出向元の会社の変更の範囲を超える場合にはその旨を明示する必要があるとされます。
有期契約労働者に対する明示事項
有期労働契約に関する追加事項として、更新上限の明示、無期転換申込機会の明示、無機転換後の労働条件の明示が挙げられます。有期労働契約の締結と契約更新のタイミングごとに、更新上限の有無と内容の明示が必要です。「契約の更新 有 通算契約期間は4年を上限とする」といった具合です。そして「無期転換申込権」が発生する更新タイミングごとに、無期転換を申し込むことができる旨の明示が必要となります。さらにその場合には無期転換後の労働条件も明示することが求められます。無期転換後の労働条件の決定に当たっては、他の正規社員とのバランスを考慮し有期契約労働者に説明するよう務めなければならないとされております。
コメント
改正労働契約法が平成25年に施行され、2018年に最初の無期転換権が発生して数年が経過しました。労働条件分科会の資料によりますと、2020年4月の時点で無期転換権が発生した事業所のうち、実際に無期転換権を行使した労働者がいる事業所は35%、無期転換権を行使せずに継続雇用されている労働者がいる事業所は80%余りとされます。また無期転換逃れを目的とした雇い止めも多く、訴訟に発展している事例も多数発生しており、無期転換ルールには課題が多いのが現状と言えます。今回の労基法施行規則改正は労働条件、特に無期転換が有り得るのかを明示することにより、有期雇用労働者に将来の予測可能性を与えるものと言えます。また今後さらに有期雇用労働者の生活の安定を図るべく法改正などが続くものと予想されます。以上のように来年4月1日から明示内容と明示タイミングが変わります。今のうちから内容を確認し、準備しておくことが重要と言えるでしょう。
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