アスベスト訴訟、建材メーカー12社に9億円超の賠償命令
2023/07/11 コンプライアンス, 労働法全般, 建設

はじめに
建設作業中のアスベスト吸引が原因で肺に健康被害を受けたとして、元作業員や遺族が建材メーカー21社を相手取り提訴した裁判で、大阪地方裁判所は、6月30日、このうち12社の責任を認め、およそ9億4000万円の支払いを命じました。
総額9億円超の賠償命じる
建設現場での作業中に建材用アスベスト(石綿)を長年にわたって吸い込み、肺がんや中皮腫などになるなどの健康被害を受けたとして、元作業員や遺族ら計129人が、建材メーカー21社に対し総額およそ26億円の賠償を求めていた今回の訴訟。
報道などによりますと、内装工や吹き付け工だった73人は、建設現場でアスベストを含む建材の加工に携わるなどした際、アスベストを吸って中皮腫などの健康被害を受けたということです。
こうした中、大阪地方裁判所は、建材メーカー12社に対し賠償を命じる判決を出しました。その総額は約9.4億円。基準慰謝料額として、死亡の場合は1人当たり2950万円、肺がんや中皮腫などを患った原告については1人当たり2750万円と統一的な基準を明らかにしています。
裁判所は判決の中で、「屋内建設現場における建設作業従事者に対して、建材メーカーは自らが製造・販売したアスベスト建材の危険性及び危険回避手段について警告すべき義務があった」と述べ、屋内作業者に対する警告義務を負うとしました。しかし屋外での作業に関しては「アスベストばく露の危険性を予見できたと直ちに認められない」としています。
アスベスト被害を受ける原因となった建材の特定は職種ごとに実施。特定できない場合には、建材が業界内で10%以上のシェアがあったかどうかなどの点で判断し、賠償責任を原告の個別事情に鑑みて検討していたということです。
このような建設現場でのアスベストによる健康被害をめぐっては、2021年5月17日に、最高裁判所が国と建材メーカーの賠償責任を認める判決を出していて、原告全員がすでに国と和解しています。
一方で、建材メーカーごとの責任の範囲や賠償額を争う訴訟は全国で続いています。
労働安全衛生法
労働安全衛生法は、高度経済成長期にアスベストなどの労働災害が発生したことをきっかけに、労働者を守るための法律、労働安全衛生法が昭和47年に制定され、企業には労働者の安全を確保する義務が課せられるようになりました。
現在でも工業製品の中には、過去の石綿含有部品が使用されていることがあるため、事業者は、交換・廃棄などする際に、労働者に呼吸用保護具を着用させるなどの措置を講じるよう、呼びかけています。
「労働安全衛生法」に基づく「石綿障害予防規則」第10条第1項や第2項では、すべての事業者に労働者の石綿ばく露防止対策を義務づけています。例えば、事業者は、自らの雇用する労働者が通常働く場所で吹付け石綿などが劣化し、労働者が石綿にばく露するおそれがあるときは、その場所で労働者を働かせてはなりません。
労働安全衛生法は労働基準法と類似する部分があると言われています。
労働基準法には有機溶剤中毒予防規則など関連規則が制定されるなど、いわゆる“労働基準”が盛り込まれている一方で、労働安全衛生法ではさらに職場の体制や従業員の健康管理と言った、労働者の健康と安全についてより詳しく記載されています。
さらに罰則も設けられていて、違反行為をすると3年以下の懲役又は300万円以下の罰金などが科される恐れがあります。
○3年以下の懲役又は300万円以下の罰金
・黄りんマツチ、ベンジジン、ベンジジンを含有する製剤その他の労働者に重度の健康障害を生ずる物で、政令で定めるものは、製造し、輸入し、譲渡し、提供し、又は使用してはならない。
(安衛法55条、116条)
○ 1年以下の懲役又は100万円以下の罰金 (一例)
・特に危険な作業を必要とする機械等として別表第一に掲げるもので、政令で定めるもの(以下「特定機械等」という。)を製造しようとする者は、厚生労働省令で定めるところにより、あらかじめ、都道府県労働局長の許可を受けなければならない。
(安衛法37条1項、117条)
コメント
死者も出ているアスベスト訴訟。法律制定のきっかけの一つにもなるなど、社会的にも大きな影響を及ぼしました。アスベストによる健康被害は、闘病中の身体的な苦痛が甚大で、さらに治療も難しいことから、被害者は大きな絶望の中、過ごしているといいます。
今回の訴訟で賠償責任が認められた建材メーカーは計12社で過去最多となっており、基準慰謝料額も高く設定されています。それだけ、裁判所としても被害の深刻さを認識したということだと思います。
吸引から数十年後に発覚することが多いとも言われるアスベストによる健康被害。今後、新たな被害者が発覚する可能性も否めません。建材メーカーの責任がどこまで認められるのか、全国各地で展開されている訴訟の行方を注視する必要があります。
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