エスコンジャパンリート、資産運用委託会社が行政処分を受けたことを公表
2022/07/25   金融法務, 金融商品取引法

はじめに


エスコンジャパンリート投資法人が資産の運用を委託する株式会社エスコンアセットマネジメントは2022年7月15日、金融庁より金融商品取引法第51条及び第52条第1項に基づく下記の行政処分を受けたことを公表しました。そこで本記事では、同社が行政処分を受けた経緯などについて詳しく解説します。

 

行政処分の原因


今回の行政処分は、エスコンアセットマネジメントの行為が金商法第42条第1項に定める「忠実義務」に違反すると認められたことによるものです。同法における忠実義務とは、権利者のため忠実に投資運用業を行わなければならないものとされており、これに反した際は行政処分等の対象となるという内容です。今回の処分の対象となったのは以下の2つの事実です。

1.不動産鑑定業者の独立性を損なう不適切な働きかけ
1つ目は、「不動産鑑定業者の独立性を損なう不適切な働きかけ」です。エスコンアセットマネジメントは、親会社等の利害関係者が保有する不動産をエスコンジャパンリート投資法人に取得させる際に、第三者の不動産鑑定業者に対して、当該不動産の鑑定評価を依頼し、算定された鑑定評価額を上限として不動産の取得価格を決定していました。ところが、エスコンアセットマネジメントは不動産鑑定業者から提示された鑑定評価額の中間報告・概算額が親会社の売却希望価格に満たなかったとされる3物件の不動産に関して、親会社の売却希望価格を優先し、親会社の売却希望価格を伝達していました。このように、鑑定評価額が当該売却希望価格を上回るように算定を依頼した不動産鑑定業者に対して、鑑定評価額を引き上げるといった行為が見られたといいます。

2.不適切な不動産鑑定業者選定プロセス
行政処分の原因となった2つ目の理由は、不適切な不動産鑑定業者選定プロセスにあります。エスコンアセットマネジメントは、親会社からの取得となる複数物件の不動産鑑定評価を依頼する際、親会社の売却希望価格より高い鑑定評価額となることを狙い、複数の不動産鑑定業者から不動産鑑定評価に係る概算額を聴取し、その中で最も高い概算額を提示した不動産鑑定業者の鑑定報酬額が、概算額を聴取した他の不動産鑑定業者と比して最も廉価になるよう、交渉していたものとされています。これに加え、エスコンアセットマネジメントは当該不動産鑑定業者による概算額が最も高かったことを伏せたまま、当該不動産鑑定業者の鑑定報酬額が最も廉価であることを理由にして、その不動産鑑定業者を鑑定評価の依頼先として選定していました。こうした一連の不動産鑑定業者の選定の実態が、「不適切な不動産鑑定業者選定プロセス」と評価されました。

 

行政処分の内容


今回、エスコンアセットマネジメントに下された行政処分の内容は以下になります。

(1)業務停止命令
令和4年7月15日から令和4年10月14日までの間、新たな資産運用委託契約の締結禁止及び不動産(不動産信託受益権を含む)の取得に係る運用指図禁止

(2)業務改善命令
・エスコンジャパンリート投資法人の投資主に対する、今回の行政処分の内容説明及び適切な対応
・法令等遵守に係る経営姿勢の明確化、経営陣による責任ある法令等遵守態勢及び内部管理態勢の構築、並びに、これらを着実に実現するための業務運営方法見直し
・本件の原因究明と具体的な再発防止策の策定(投資運用業に係る意思決定の妥当性を検証するための社内プロセスの明確化など、利益相反管理について十分な態勢の構築等)
・経営陣を含めた責任の所在の明確化
・改善命令を受けた項目への対応状況の書面報告

 

エスコンジャパンリート投資法人が目指す業務改善


エスコンジャパンリート投資法人は、本件が発生した原因として、(1)スポンサーのの影響力の排除が困難なガバナンス体制であったこと、(2)スポンサーの影響力を背景とした不動産鑑定業者の独立性を損ねる本資産運用会社の不適切な業務実態にあったことを挙げています。その上で、再発防止策として、以下を実施するとしています。

①組織変更等によるガバナンス体制の変更
②鑑定評価に関する恣意性やスポンサーの影響力を確実に排除するための不動産鑑定評価の発注業務に関する規定の見直し
③「物件取得基準」及び「物件取得業務マニュアル」の制定(2022年6月22日付) ※今後更に規定を追加予定

 

コメント


エスコンジャパンリート投資法人は、上記の再発防止策の他、監査等委員会設置会社への移行、内部監査部を監査等委員会の下部組織へと態勢変更を実施、投資運用委員会等の構成員の変更、取締役の変更など、組織の体制を大きく変更しています。また、現時点における同法人の資産運用状況の予想についての修正はないとしており、今後も同様の再発防止策を継続していくことが考えられます。
 

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