ワカメ産地偽装で摘発、食品産地偽装への規制について
2022/03/08   コンプライアンス, 広告法務, 食品衛生法

はじめに

 外国産のワカメを国産と偽って出荷していたとして東京都内の食品輸入・卸売業の会社社長が逮捕されていたことがわかりました。食品表示法と不正競争防止法違反容疑とのことです。今回は食品産地偽装に関する法規制について見ていきます。

 

事案の概要

 報道などによりますと、東京都内の食品輸入・卸売会社社長の男(64)は、昨年11月に既に逮捕・送検されている静岡市内の食品加工会社「黒汐の華」の社長らと共謀し、中国など外国産のワカメに「鳴門産」などと記載されたステッカーを貼り出荷していた疑いが持たれているとされます。逮捕された男は都内で中国などからワカメなどの海産物を輸入する会社を経営しており黒汐の華が国産と偽装することを知りながら卸していたとのことです。警察の同社に対する捜査で押収した伝票などから男の関与が発覚したものとされております。

 

食品表示法による規制

 食品表示法は、食品衛生法やJAS法などの食品表示に関する部分を統合する形で平成25年に制定され、平成27年に施行された比較的新しい法律です。同法では農産物、畜産物、水産物、米類、加工食品に分類され、それぞれ名称や原産地、原材料、添加物などの記載が義務付けられております。各分類の詳細については割愛しますが、水産物についてはパック詰めされていないものの場合、漁獲した水域、原産国、養殖・解凍の別などの表示が必要です。パック詰めのものの場合も同様ですがさらに消費期限や保存方法、加工者の名称や所在などの記載が必要とされております。内閣総理大臣、農水大臣、財務大臣、都道府県知事等は表示事項の遵守を指示することができ(6条)、従わない場合は従うよう命令を発することも可能です(7条)。これに違反した場合は1年以下の懲役、100万円以下の罰金(20条)、法人には1億円以下の罰金となります(22条1項2号)。また原産地偽装については2年以下の懲役、200万円以下の罰金、法人に1億円以下の罰金が規定されております(19条)。

 

不正競争防止法による規制

 不正競争防止法2条1項13号では、商品の原産地、品質、内容、製造方法等や役務の質、内容、用途、数量等について誤認させるような表示をする行為や、そのような表示がされた商品を譲渡等をする行為を不正競争行為の一種である「誤認惹起行為」として禁止しております。このような行為によって営業上の利益を侵害された者は差し止めや損害賠償請求ができます。また罰則として、5年以下の懲役、500万円以下の罰金またはこれらの併科が規定されており(21条2項1号、4号)、法人に対しては3億円以下の罰金となっております(22条1項)。産地偽装としては、加工のみをベルギーで行ったダイヤモンドをベルギー直輸入原石として、市価の半額などと表示していた例が挙げられます(東京高裁昭和53年5月23日)。

 

景表法による規制

 景表法では優良誤認表示や有利誤認表示の他に、「一般消費者に誤認させるおそれがある表示」として内閣総理大臣が指定するものも不当表示として規制しております(5条3号)。それを受け公取委の告示では「商品の原産国に関する不当な表示」(昭和48年公取委告示34号)が定められております。それによりますと、国内で生産された商品について、外国の国名や地名、国旗、紋章、外国の事業者等の名称などを表示することが、また外国で生産された商品について、当該国以外の国名、国旗、紋章、事業者の名称等を表示することが不当表示行為とされます。違反に対しては内閣総理大臣(消費者庁)による措置命令(7条1項)の対象となり、それに違反した場合には罰則として2年以下の懲役、300万円以下の罰金、またはそれらの併科となります(36条1項、2項)。

 

コメント

 本件では、静岡市の水産加工会社の社長らと、東京都の輸入卸売会社の社長らが共謀して中国産ワカメを「鳴門産」として水産会社に販売していたとされます。また販売に際して偽造した「産地証明書」を提示して信用を得ようとしていたとも言われております。これにより5000万円ほどの利益を得ていたと見られ食品表示法および不正競争防止法違反の疑いがかけられております。以上のように食品の産地偽装については食品表示法や不正競争防止法、場合によっては景表法に抵触する可能性があります。最近では熊本産アサリでも同様の違反行為が発覚しており、違法な表示による食品の販売の氷山の一角にすぎないとの声もあります。しかし上記のように違反に対してはかなり重い罰則が設けられております。自社でこのようなことが行われないよう、周知徹底していくことが重要と言えるでしょう。

 

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