今年4月施行、改正職業安定法施行令における「求人不受理」
2022/01/27 労務法務, 労働法全般

はじめに
昨年6月の育児介護休業法改正に伴い職業安定法施行令にも改正が入り、今年4月1日から施行される予定です。これによりハローワーク等での求人不受理の対象が拡大されます。今回は職安法施行令の改正点について見ていきます。
改正の経緯
職業安定法は2019年改正により求人不受理とすることができる対象として一定の労働関係法令違反の場合や暴力団などの反社会的組織による求人などが加えられました。これにより求職者に適正かつ公正な職業紹介と違法または不適切な求人を排除し公共の福祉と社会発展に寄与するという目的が強化されます。また昨年6月に改正された育児介護休業法の今年の施行に合わせて職安法施行令も改正され、求人不受理の対象もさらに拡充されることとなります。以下具体的に見ていきます。
求人不受理とは
職安法5条の5第1項によりますと、公共職業安定所、特定地方公共団体および職業紹介事業者は、求人の申込みは全て受理しなければならないとしております。原則として全ての求人を取り扱うことが義務付けられております。しかし例外として(1)内容が法令に違反する求人、(2)賃金、労働時間その他の労働条件が通常のものと比較して著しく不適当である求人、(3)労働関係法令に違反し行政処分等を受けた者からの求人、(4)5条の3第2項による明示を行わない求人、(5)暴力団等の関与する求人、(6)正当な理由なくハローワーク等からの報告の求めに応じない者からの求人については申込みを受理しないことができるとされます。これを求人不受理と言います。求人不受理は義務ではなく、あくまで不受理することができるに留まっております。
求人不受理の対象となる規定
求人不受理の対象となる法令等としては、労働基準法の男女同一賃金、強制労働の禁止、労働条件明示、労働時間、休日休暇、年少者関係、妊産婦関係等の規定、最低賃金法、職安法の労働条件の明示、個人情報取り扱い、争議の不介入、秘密保持義務等の規定、男女雇用機会均等法、育児介護休業法など多岐にわたっております。そして労基法や最低賃金法に違反し1年間に2回以上是正指導を受けた場合は6ヶ月間、送検・公表された場合は1年間不受理となります。職安法や男女雇用機会均等法、育児介護休業法違反し是正勧告を受けたにもかかわらず従わずに公表された場合は6ヶ月間不受理となります。
自己申告制度
ハローワーク等の職業紹介事業者は求人者に対して求人不受理の対象に該当しないことについての自己申告を求めることができます。求人者がこの自己申告を行わない場合も不受理とすることができます。また求人者が不実の自己申告を行った場合は都道府県労働局が勧告や公表などを行うことができるとされます。厚労省の公開している自己申告書の例では各法令ごとに不受理期間などが例示され、チェックシート形式で過去1年間に2回以上同一の対象条項で違反行為により是正勧告を受け、是正していない、または是正してから6ヶ月経過していないなどの項目にチェックする方式となっております。1つでもチェック項目があれば不受理の対象となるということです。
コメント
昨年6月に育児介護休業法が改正され、今年4月から施行予定となっております。詳細については後日取り上げる予定ですが、柔軟な男性の育休取得や分割取得、事業者への周知・意向確認措置の義務付けなどが盛り込まれております。これらに違反し是正勧告にも従わずに公表された場合も不受理の対象となります。不受理の扱いは義務ではありませんが、ハローワークなどの公共機関の場合は不受理とするものと言えます。以上のように近年職業安定法関連の改正が相次いでおり、労働関係法令に違反した事業者については求人の段階で排除されることとなっております。劣悪な労働環境で減少した労働者を新たに補充することが困難となっていきます。今後労働関係法令の改正のたびに不受理対象も拡大されることが予想されます。今一度自社の労務管理について見直しておくことが重要と言えるでしょう。
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