サントリー社長「45歳定年制」を提言
2021/09/16 労務法務, 労働法全般, その他
はじめに
サントリーホールディングスの新浪社長が9月9日に開催された経済同友会の夏季セミナーにて「45歳定年制」を導入すべきだと提言し、SNSなどで話題を集めています。
事案の概要
国は、高年齢者雇用安定法を改正し、今年4月1日には70歳までの就業機会の確保が企業の努力義務として課されるようになりました。以前にも、60歳未満の定年禁止を規定したり65歳までの雇用確保措置を義務付けたりと、国は定年を伸ばす方向で法改正をしているといえます。そのため、新浪社長の本件の発言は国の志向する方向とは逆行するものであり、世間に対して大きな波紋を呼ぶこととなりました。
65歳定年制について
先述のとおり、事業主が定年を定める場合には、その定年年齢は60歳以上としなければなりません(高年齢者雇用安定法8条)。また、65歳までの雇用確保措置として、定年を65歳未満に定めている事業主は、①65歳までの定年引上げ②定年制の廃止③65歳までの継続雇用制度を導入(継続雇用制度の適用者は原則として希望者全員)しなければなりません(同法9条)。つまり、事業主としては、労働者を原則65歳まで雇わなければならないということになります。さらに、高年齢者雇用確保措置の実施に係る公共職業安定所の指導を繰り返し受けたにもかかわらず具体的な取組を行わない企業には、勧告書の発出、勧告に従わない場合は企業名の公表を行う場合があります。
70歳までの定年引上げについて
令和3年4月1日に施行された高年齢者雇用安定法の改正部分によると、①70歳までの定年引き上げ②定年制の廃止③70歳までの継続雇用制度(再雇用制度・勤務延長制度)の導入(特殊関係事業主に加えて、他の事業主によるものを含む) ④ 70歳まで継続的に業務委託契約を締結する制度の導入 ⑤70歳まで継続的に以下の事業に従事できる制度の導入(a.事業主が自ら実施する社会貢献事業 b.事業主が委託、出資(資金提供)等する団体が行う社会貢献事業)、以上①ないし⑤のいずれかの措置を講ずる努力義務が事業主に課されることになりました。努力義務というのは、規定に違反したら何らかの制裁が科されるというものではなく、できる限り規定に従うよう努力を求めるものに過ぎません。
コメント
新浪社長の発言には一定の合理性があり、国の方針と異なるからといって一概に悪いものだと言えないと思われます。「45歳定年制」は、自らの社内のポジションを確保した後に向上心を持てていない中高年の者が、自ずと自己研さんに励むようになる制度ではあると思います。企業法務従事者としては、現行の定年制について再確認し、自社の就業規則等が高年齢者雇用安定法に違反していないかチェックするとよいでしょう。
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