9月1日から施行、労災保険特別加入の対象拡大へ
2021/08/30 労務法務, 労働法全般, その他

はじめに
6月の厚労省労働政策審議部会の労働者災害補償保険法施行規則改正案の了承を経て、9月1日から労災保険の特別加入の対象が拡大されます。
フリーランスとして働くIT人材や自転車配達員などが含まれるとのことです。今回は特別加入とその対象拡大について見ていきます。
改正の経緯
近年、企業に直接雇用されずに働くフリーランスや、個人事業主といった業態が増加しております。ところが労災保険法の対象となる「労働者」とは、労働基準法に言うところの「労働者」であり、「職業の種類を問わず、事業又は事務所に使用される者で、賃金を支払われる者」を言うとされており、これらの業態で働く人は対象となっておりません。
しかし実態は企業に雇用されている労働者と変わらない業務を行っている場合も多く、業務上または通勤中の災害から保護すべきとする法の趣旨は同様に当てはまります。
そこで一定の業態で働く人を特別に労災保険の加入対象とする特別加入制度の対象が拡大されることとなりました。以下具体的に見ていきます。
労災保険の特別加入制度とは
特別加入制度は上記のとおり通常の労働者と同様の業務に従事する一定の者が対象となっております。その対象は従来、個人事業主、法人の取締役、家事使用人、同居の親族等となっております(労災保険法33条~36条)。
これらに該当する場合は、自ら保険料を支払うことによって加入できます。保険料は日額3,500円から20,000円の範囲で計算し、365日分を年額として支払うこととなります。
これに加入すると、通常の労災保険と同様に業務上または通勤中の災害に対して、療養、休業、障害、遺族などの給付が受けられることとなります。
特別加入の対象者
特別加入の対象者は第1種特別加入者、第2種特別加入者、第3種特別加入者に分けられます。
第1種は金融業、保険業、不動産業、小売業で常時使用する労働者数が50人以下、卸売業、サービス業で100人以下、その他で300人以下の事業を営む中小事業主となります(規則46条の16)。
第2種は自動車を使用する旅客・貨物運送、土木・建築、漁業、林業、医薬品の配置販売、廃棄物収集・運搬、特定農作業、家内労働、労働組合の常勤役員、介護、放送などの事業を労働者を使用せず行っている自営業となります(同条の17)。
第3種は国内企業から海外に出向または派遣される場合で、海外出張としての労災適用が受けられない場合となります。
新しく対象となる者
これらの特別加入対象者に加え、今年令和3年4月1日から新たに俳優、声優、音楽家、ダンサー、漫才師、監督、メイク、撮影、証明などに従事する芸能関係者、キャラクターデザイン、演出、作画、絵コンテ、原画、背景などに従事するアニメーション作成従事者、柔道整復師、創業支援等措置に基づいて事業を行う者が追加されました。
そして9月1日からはフリーランスのIT人材や自転車や原付自転車によって貨物を運送す者が対象に加わります。
コメント
労災保険法が制定された昭和22年当時では想定されていなかった、労働者と同様に業務にあたる事業主や役員等に加え、近年ではさらにフリーランスとして働くIT関係の技術者や自転車で飲食物を配達する個人事業者が現れております。
それらの事業者を保護するため今年度に入り、立て続けに特別加入の対象者が拡大されております。特にウーバーイーツや出前館などの従事者でつくる業界団体が特別加入への対象拡大を要望したという背景もあります。
これにより労働災害が生じた場合の保障が拡充されることとなります。これまで加入していなかった中小事業の経営者や、従業員と同様の業務に就く役員だけでなく、フリーランス事業者を使っている場合は特別加入を検討しておくことも重要と言えるでしょう。
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