日工株式会社 新入社員に無償で自社株
2021/08/31   商事法務, 会社法, その他

はじめに

 日工株式会社が新入社員を含む従業員へ譲渡制限付株式報酬として、無償で自社株を付与することを、8月6日に明らかにしました。

 

事案の概要

 日工は東証一部に上場し、アスファルトやコンクリートを作るプラントの製造等を手掛ける企業です。

 無償で株式を付与される者は、2021年度に社長賞を受賞した者や2021年度の勤続10・20・30年の者、そして2020年度・2021年度の新入社員及び2019年5月10日以降入社の中途社員と幅広く、付与する株式の価額の総額は約845万円にものぼります。

 付与する目的として、同社の従業員に株主と同様の目線から企業価値の向上を図ってもらうこと及びモチベーションの向上会社へのロイヤリティの醸成と継続的な勤務を促すことにあると同社は述べています。

 

社員が自社株を保有することについて

 本件では無償で社員に株式を付与するということから下記のようなリスクは考えられませんが、社員持ち株制度等の自社株を社員に買わせる制度などによって社員が株式を購入した場合を想定し、説明していきます。

 従業員に自社株を保有させることは、会社の業績向上により自分の資産が増えることから、業務のモチベーションが上がります。もっとも、裏を返せば資産が勤務先の業績に依存してしまうリスクがあります。業績悪化により賞与カット等の収入減少に加え、株価が下がることで仕事も資産もともに失うことになりかねません。

そのため、自社株を保有させすぎると、自社と社員が一蓮托生の関係になり、社員にとってはリスクヘッジができていないといえるかもしれません。

 

譲渡制限株式とは

 原則として株式は自由に譲渡できます。そして、例外として定款や契約等により、株式に譲渡制限をかけることができます。譲渡制限株式とは、基本的には取締役会又は株主総会での承認がなければ株式が譲渡できないというものです。

 このような制限をかける目的として、会社にとって不利益となる第三者に対して株式が渡るのを防ぐことや、株式の所有者を明確にすることが挙げられます。

 

コメント

 社員への自社株の付与は、モチベーション向上など様々なメリットがありますが、無償で付与することは会社にとって負担となり、メリットとデメリットとでどちらの方が大きいか判断が難しい問題ではあります。もっとも、このような動きは、人材確保に悩む中小企業において抜本的な解決に資するのかもしれません。

 企業法務従事者としては、株式を従業員に保有させるメリット・デメリットを再考し、自社の社員の株式保有事情に関して今一度見直すと良いかもしれません。

 

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