労災かくし 解体業の個人事業主を送検
2021/08/24 労務法務, 労働法全般, その他

はじめに
和歌山の御坊労働基準監督署は、解体業を営む個人事業主が労働者死傷病報告を遅滞なく提出しなかったことを理由に、同人を労働安全衛生法100条違反容疑で令和3年7月6日に和歌山地検に書類送検しました。
事案の概要
令和2年1月に被災した労働者が御坊労基署に対し休業補償が受けられないとの相談を行ったことがきっかけで本件が明らかとなりました。当該個人事業主は今年に入って報告書を提出しています。
労働者死傷病報告とは
労働者が仕事中の負傷等により休業・死亡したときは、事業主は、所轄の労働基準監督署に労働者死傷病報告を提出しなければなりません。
労働者死傷病報告は、労働安全衛生法及び労働安全衛生規則により義務付けられた行政への事故報告と位置づけられ、これに違反すると書類送検され50万円以下の罰金という罰則を受けることとなります。この報告をしないことがいわゆる労災隠しと言われます。
もっとも、労働者が怪我をすれば必ず報告をしなければならないわけではなく、報告義務の発生には一定の要件が設けられています。
報告をしなければならない場合の要件
まず、労災保険を使うか否かに拘らず、労働者が仕事中の災害等によって休業・死亡したときは、事業主は労働者死傷病報告をしなければなりません。
そして、休業が4日以上か4日未満かで提出する報告書の様式が異なります。一方、仕事中の災害であっても、負傷等をしたのが労働者でない場合や労働者が仕事を休まなかった場合には、労働者死傷病報告をする必要がありません。
さらに、通勤途中の災害は労災の対象とはなりますが、仕事中の災害とは言えないため、労働者死傷病報告をする必要がありません。
コメント
労働災害と密接な関わりのある事業を行う会社にとって、本件は他人事ではないはずです。会社内での処理手順が一度確立されていたとしても、それが正常に機能しているかのチェックを怠ることは本件のような顛末を招来してしまいます。
労働者への扱いがいい加減な企業であるというイメージを一度持たれてしまうと、その後の企業活動に大きな影響を及ぼしてしまいます。企業法務従事者としては、労働災害が起きた場合の処理手順の確立ができていないならばその確立を、確立できているならばそのチェックを今一度行うとよいでしょう。
関連コンテンツ
新着情報

- まとめ
- 株主提案の手続きと対応 まとめ2024.4.10
- 今年もまもなく定時株主総会の季節がやってきます。多くの企業にとってこの定時株主総会を問題無く無...

- 解説動画
大東 泰雄弁護士
- 【無料】優越的地位の濫用・下請法の最新トピック一挙解説 ~コスト上昇下での価格交渉・インボイス制度対応の留意点~
- 終了
- 視聴時間1時間

- 解説動画
奥村友宏 氏(LegalOn Technologies 執行役員、法務開発責任者、弁護士)
登島和弘 氏(新企業法務倶楽部 代表取締役…企業法務歴33年)
潮崎明憲 氏(株式会社パソナ 法務専門キャリアアドバイザー)
- [アーカイブ]”法務キャリア”の明暗を分ける!5年後に向けて必要なスキル・マインド・経験
- 終了
- 視聴時間1時間27分
- 弁護士
- 髙瀬 政徳弁護士
- オリンピア法律事務所
- 〒460-0002
愛知県名古屋市中区丸の内一丁目17番19号 キリックス丸の内ビル5階
- 弁護士
- 大谷 拓己弁護士
- 弁護士法人 咲くやこの花法律事務所
- 〒550-0011
大阪府大阪市西区阿波座1丁目6−1 JMFビル西本町01 9階

- セミナー
内田 博基 氏(三菱UFJ信託銀行株式会社 執行役員 法務部長 ニューヨーク州弁護士)
藤原 総一郎 氏(長島・大野・常松法律事務所 マネージング・パートナー)
板谷 隆平(MNTSQ株式会社 代表取締役/ 長島・大野・常松法律事務所 弁護士)
- 【3/19まで配信中】CORE 8 による法務部門の革新:三菱UFJ信託銀行に学ぶ 企業内弁護士の力を最大限に活かす組織作りの秘訣
- 終了
- 2025/03/19
- 23:59~23:59

- ニュース
- コロナ社にカヤバ社、下請業社への金型無償保管で公取委が勧告/23年以降15件目2025.4.28
- 金型保管をめぐる下請法違反の事例が相次いでいます。 暖房機器などの製造・販売を行う「株式...

- 業務効率化
- 法務の業務効率化

- 業務効率化
- Hubble公式資料ダウンロード