東芝が東京地裁に選任申立て、総会検査役について
2021/05/20   商事法務, 総会対応, 会社法, その他

はじめに

東芝は18日、6月25日に開催が予定されている第182期定時株主総会について、株主総会検査役選任の申し立てを東京地裁に行った旨発表しました。検査役が選任されたら改めて発表するとのことです。今回は定時総会の季節を前に、総会検査役について見直していきます。

事案の概要

 東芝は先月の英投資ファンドCVCキャピタル・パートナーズによる買収提案に関連して社長の車谷氏が退任するなど混乱が生じており、社外取締役による諮問機関「戦略委員会」の設置や増配による1500億円の追加還元の方針も示しております。そんな中、来月25日に開催が予定されている定時株主総会に先立って同社は総会検査役の選任を東京地裁に申し立てました。本総会の招集の手続きや決議方法を調査させることを目的としております。

株主総会検査役とは

 会社法306条1項によりますと、会社および議決権の1%以上の議決権を保有する株主は株主総会に先立って裁判所に対し総会検査役の選任を申し立てることができます。総会検査役は株主総会での招集や決議の手続きに違法または不当な点がないかを調査し、報告書を作成します。これにより後日株主総会について紛争が生じた場合に報告書を証拠とすることができ、また紛争そのものを予防することが期待できます。総会検査役の報酬は裁判所が決定し、会社が負担することとなります(同4項)。また取締役や監査役が検査役の調査を妨害した場合には100万円以下の過料に処される場合があります(976条5号)。

検査役の調査事項

 総会検査役は上で述べたように株主総会の招集手続きや決議方法に違法・不当な点がないかを調査します。具体的には招集決定をした取締役会決議、招集通知や添付書面とその発送、株主提案、株主総会での議決権や定足数、委任状の行使状況や運営状況などが対象となります。これら必要な調査を行ったら調査結果を記載した報告書を作成し裁判所に提出することとなります(306条5項)。報告書を受け取った裁判所は必要があると認める場合には、取締役に対し一定の期間内にあらためて株主総会の招集を命じたり、検査役の報告書を株主に通知することを命じることができます(307条)。

取締役の業務執行検査役とは

 総会検査役に似た制度として業務執行検査役というものが存在します。これは取締役の業務執行に関し、不正行為または重大な法令・定款違反の疑いがある場合に選任され調査を行う者です。議決権の3%以上または発行済株式数の3%以上を保有する株主が裁判所に選任を申し立てることができます(358条)。選任された検査役は会社の業務執行や財産状況を調査し、総会検査役と同様に報告書を作成します。報告書は裁判所および選任申し立てを行った株主に交付されることとなります。報酬についても同様に裁判所が決定し会社が支払うこととなります。

コメント

 本件で東芝は来月に開催予定の定時株主総会に先立って総会検査役の選任申し立てを行いました。株主ではなく会社側が申し立てた形となります。株主総会の招集手続きや決議方法に違反があった場合には事後株主総会決議取消の訴えや決議不存在確認の訴えが提起されることがあります。本件のように投資ファンドによる買収の動きがある場合や経営権争いが生じている場合、大株主による委任状勧誘が行われている場合などはやはり後々紛争に発展する可能性があると言えます。そのような場合に備えて総会検査役が利用されることとなります。今年もまもなく定時株主総会の集中期を迎えます。株主等にこのような動きがある場合には総会検査役選任を検討していくことが重要と言えるでしょう。

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