食肉卸会社に有罪判決、不正競争防止法の規制について
2021/04/02 コンプライアンス, 消費者取引関連法務, 不正競争防止法, その他

はじめに
神戸の食肉卸会社が牛肉や豚肉のブランドを偽装していたとして不正競争防止法違反に問われていた事件で神戸地裁は26日、元社長に懲役1年6月、執行猶予4年、法人に50万円の罰金を言い渡していたことがわかりました。県からの刑事告発から発覚したとのことです。今回は不正競争防止法の規制を見直していきます。
事案の概要
報道などによりますと、食肉卸会社「神戸サカヱ屋」(神戸市東灘区)の前社長海崎孝一被告(61)は従業員らと共謀して平成29年5月~30年1月、8回にわたってブランド認定を受けていない豚肉計約70kgについて、兵庫県産のブランド豚「ひょうご雪姫ポーク」と虚偽の記載をした上で県内のとんかつ店に販売したとされます。また和牛と乳牛を掛け合わせた交雑種の牛肉約100kgを高級和牛と装って焼肉チェーンに販売しており、過去3年間で計約6トンにのぼる食肉偽装を行っていた疑いで県からも告発がなされておりました。
周知表示混同惹起行為
不正競争防止法2条1項1号では、他人の商品等表示として広く認識されているものと同一または類似の商品等表示を使用し、他人の商品または営業と混同を生じさせる行為は不正競争行為の1つとして禁止されております。商品等表示とは、典型提起にはブランドや商標などですが、氏名、商号、標章、商品の容器、包装、その他営業を表示するものとされております。他人が営業努力により獲得してきた顧客吸引力にタダ乗りする行為を禁止しているということです。裁判例では烏龍茶や紅茶の容器のデザイン(東京地裁平成20年12月26日、大阪地裁平成9年1月30日)や喫茶店の店舗の外観なども商品等表示に該当するとしました(東京地裁平成28年12月19日)。また営業の方法や形態そのものも該当するとされた例があります(大阪高裁昭和58年3月3日)。
品質等誤認惹起行為
食肉に関しては品質等誤認惹起行為も問題となってくる場合があります。不正競争防止法2条1項20号では、商品・サービスの品質・内容等について誤認を生じさせる表示も不正競争行為としております。商品の原産地や原材料、等級などについて誤認させるような行為が該当します。裁判例では京都産ではないものに「京の柿茶」と表示したもの(東京地裁平成6年11月30日)、中国製のかばんに「NEWYORK
CITY」と表示したもの(大阪地裁平成12年11月9日)、2級の清酒に「特級」と表示したもの(最高裁昭和53年3月22日)などがあります。
違反した場合の罰則等
上記不正競争防止法違反については、5年以下の懲役、500万円以下の罰金またはこれらの併科が規定されております(21条2項)。法人についても両罰規定が置かれており3億円以下の罰金となります(22条)。また民事措置として差止請求権や損害賠償請求権(3条、4条)、不正競争行為によって他人の営業上の信用を害した者にへの信用回復措置なども規定されております(14条)。
コメント
本件で食肉卸会社はブランド認定を受けていない国産豚肉を「ひょうご雪姫ポーク」ブランドと装ってとんかつ店に販売したとされます。これは商品等表示を偽装し誤認を引き起こす行為に該当し得るものと言えます。神戸地裁は常習的に行われ、取引先は顧客の信頼を失うことになり、食肉業界に与えた影響も大きいとして有罪判決を言い渡しました。以上のように食肉等に関して、産地やブランド、使用部位などを偽装する行為は不正競争行為に該当します。また食肉等に他の素材や賞味期限切れ部位などを混ぜて販売していた例で不正競争防止法違反だけでなく刑法の詐欺罪も適用された裁判例もあります(ミートホープ事件、札幌地裁平成20年3月19日)。自社の製品販売で産地や原材料の等級などの表示に誤りはないか、今一度確認しておくことが重要と言えるでしょう。
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