京都府労働委員会が再発防止命令、不当労働行為について
2020/12/14 労務法務, 労働法全般, その他

はじめに
京都府労働委員会は9日、ベトナム人技能実習生の女性を労組から脱退させようとしたのは不当労働行為に当たるとして福知山市内の縫製加工会社に再発防止命令を出していたことがわかりました。労組への脱退届を書かせようとしていたとのことです。今回は不当労働行為について見直して行きます。
事案の概要
報道などによりますと、ベトナム人技能実習生の女性は2017年7月から福知山市内の縫製加工会社「ヨーク」で働き始め、翌2018年6月に労組に加入したとされます。同社は労組が非弁行為を行っているなどとして団体交渉に応じず、また女性に対して労組に脱退届を送るための封筒に宛名などを書かせようとしたとのことです。女性は2019年に未払い賃金支払いを求め京都地裁に提訴し同年5月に和解が成立しており、また「きょうとユニオン」が京都府労働委員会に不当労働行為の救済申し立てを行っておりました。
不当労働行為とは
憲法28条では労働者の団結権、団体交渉権、団体行動権を保障しております。これらはいわゆる労働三権と呼ばれ、これらを使用者側が侵害する行為を不当労働行為として労働組合法が禁止しております(7条)。昭和32年通達によれば団結権や団体交渉権に影響を与えるすべての行為を禁止しているわけではなく、会社側の正当な理由によるものは禁止されず、また労働者側の不当な行為までも保護するものではないとしております。不当労働行為が行われた場合には労働委員会等による迅速な救済措置を求めることが可能です。以下具体的に見ていきます。
不当労働行為の類型
(1)不利益取り扱い・黄犬契約
労働契約法7条1号では労働組合員であること、加入または結成しようとしたこと、労働組合の正当な行為をしたことを理由として不利益な取り扱いをすることを禁止しております。ここに言う不利益取り扱いとは解雇や転勤、降格、減給、出勤停止、譴責などが典型例ですがそれ以外にもあらゆる行為が含まれ、不作為も該当します。そして労働組合に加入しないことや労働組合から脱退することを条件として労働契約を締結することは黄犬契約と呼ばれ禁止されております。
(2)団体交渉拒否
労働者の団体交渉申し入れに対し会社側が正当な理由なく拒否することが禁止されます(同2号)。これは単に交渉を拒絶することだけでなく、誠実に交渉しない場合も同様とされます。しかしあくまで交渉が求められているだけであって、労働者側の言い分や要求を受け入れなければならないというわけではありません。相手側の主張を理解し、会社側の主張も納得してもらうよう誠意をもって交渉に当たらなければならないということです(東京地裁平成元年9月22日)。
(3)支配介入
労働組合の結成や運営に会社側が介入することや労働組合に経済的援助をすることは支配介入として禁止されております(3号)。具体的には労働組合の内部意思に干渉したり意思決定を左右することなどです。労働組合は会社側と対等な立場でなくてはならず、その自主性や独立性を損なわせ、組織の弱体化を図る行為が公正な組合活動を阻害するということです。組合からの脱退を勧める行為も該当します。
(4)その他の類型
上記の他にも、組合活動のための諸経費や旅費など費用を会社側が援助する行為や上部団体への加入を禁止したり労働委員会への救済申し立てをしたことを理由とする不利益取り扱いなども不当労働行為に該当します。労働委員会や裁判所で証言したり証拠を提供したことなどを理由とする不利益取り扱いも同様となります。
コメント
本件でヨーク側は労組側が弁護士以外の者が行うことが禁止されている、いわゆる非弁行為を行っているなどとして団体交渉を拒絶し、またベトナム人技能実習生に労組へ脱退届を出させようとしたとされております。労働委員会は労組側の非弁行為は認められず団体交渉を拒否する正当な理由が認められないとし、また脱退させようとした事実も認定し再発防止を命じました。労働委員会による救済命令がその後裁判所による判決で支持された場合、その命令に違反したときは1年以下の懲役、100万円以下の罰金またはこれらの併科が規定されております。近年外国人技能実習生の日本における劣悪な待遇が批判を集めております。技能実習生にも労働者として各種労働関係法令が適用されます。技能実習生を使用している場合はこれらを含め、誠実に交渉にあたっていくことが重要と言えるでしょう。
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