販売預託商法が原則禁止へ、預託法改正の動き
2020/05/25 法改正対応, 消費者契約法, 法改正

はじめに
消費者庁の有識者委員会は19日、販売預託商法を原則禁止する方向で法改正に着手する旨合意していたことがわかりました。これまでの大規模な消費者被害を受けての抜本的な制度改革を目指すとのことです。今回は販売預託商法について見ていきます。
法改正の経緯
従来から昭和61年に制定された「特定商品等の預託等取引契約に関する法律」(通称、預託法)では悪質な販売預託商法から消費者を適切に保護することはできないとの指摘がなされてきました。預託法は預託取引一般を対象としており、販売預託商法に対しては規制が弱く、行政負担軽減の観点から参入規制も設けられておりませんでした。それによりこれまで幾度となく大規模な消費者被害事例が発生し社会問題化しておりました。悪質な例では被害総額が4000億円に上るとされます。それを受け、消費者庁有識者委員会では関連する法令などをまとめて抜本的な制度改革に着手することとなりました。
販売預託商法とは
販売預託商法とは、消費者に物品を販売すると同時にその商品を預かり、自ら運用、または第三者に貸し出すなどして消費者に配当して利益を還元し契約満了時に商品をまた一定額で買い取るというものです。それだけを見れば何ら問題のない取引に見えますが、通常このような商法では高い利率と元本保証をうたい高齢者などから多額の金銭を拠出させ、実際には運用の実態はなく、消費者からの出資金を別の消費者への配当に当てるといった、いわゆる自転車操業的な手法が多いとされます。このような場合、当初は配当が行われることから被害に気づかず、最終的には破綻し多額の被害を生じさせることとなります。
販売預託商法の法的問題点
(1)預託法の問題点
有識者会議の発表によりますと、預託法が対象とする取引は、①3ヶ月以上の期間対象の物品または施設利用券を預かり、または管理すること、②それらに関し財産上の利益を供与、または3ヶ月以上の期間経過後一定額で買い取ることを約する取引とされております(預託法2条1項)。そのため最初に対象物品の販売から始まる預託商法は想定されておらず、また規制内容も契約内容を明らかにするディスクローズ中心となっており消費者保護が不十分とされております。
(2)金商法との関係
販売預託商法は形式的には物品の販売が介在しておりますが、実質的には事業者が金銭の「出資」を受け、それに対して配当を行っている過ぎない場合が多いと言われております。そのため出資法が適用されるべき事案にもかかわらず形式的には出資法が適用されない場合もあり、出資法の潜脱となっている場合があるとの指摘もなされております。
(3)刑法との関係
悪質な販売預託商法は上記のとおり、消費者からの拠出金を他の消費者への配当に回すなど、実際には運用の実態はなく最終的に破綻することが最初から想定された商法と言えます。経営が早晩破綻することが予想されているにもかかわらず、それを秘匿した上で新たな消費者に高配当などをうたって契約させた場合には刑法の詐欺罪(246条)に該当しうると指摘されており、実際に詐欺罪で立件された事案も存在しております。
コメント
以上のように販売預託商法に絡む悪質商法事件は多く、2008年のふるさと共済牧場事件では被害額が約387億円、2011年の安愚楽牧場事件では4200億円、そして記憶に新しい2018年のジャパンライフ事件では2400億円の被害となっております。またエビ養殖への投資をうたったワールドオーシャンファーム事件では会長はじめ10数人が詐欺罪で立件されており、元会長は懲役14年の実刑判決を受けております。これらの預託商法に関する消費者被害を受け消費者庁有識者委員会では上記の法令の不備を補うべく関連法令の抜本的な改正に乗り出す方針です。出資や投資などを募る場合には金商法が、物品の預託を伴う場合には預託法が適用されます。そして今後より包括的な規制がなされていくことが予想されます。これらの事業を行う際には規制内容を適切に把握しておくことが重要と言えるでしょう。
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