RMBキャピタルが仮処分申し立て、株主名簿閲覧・謄写権について
2020/05/15 商事法務, 総会対応, 会社法

はじめに
三陽商会の株主であるRMBキャピタルが株主名簿の閲覧を求める仮処分を東京地裁に申し立てていたことがわかりました。三陽商会側は必要書類の提出を求めていたとのことです。今回は株主名簿とその閲覧・謄写請求について見ていきます。
事案の概要
報道などによりますと、現在経営再建中の三陽商会は今別開催される定時株主総会で新人事の承認を得て新体制下で再生プランを進めていく方針とされます。しかし同社大株主のRMBキャピタルはこれに反対し、別の取締役候補を推薦するなど対立が深まっております。RMBキャピタルは株主総会での委任状争奪戦に向けて同社に株主名簿閲覧謄写請求を行ったところ、重要な秘密情報などが含まれるとして拒絶しているとのことです。
株主名簿と閲覧・謄写請求
株式会社はその本店に株主名簿を備え置くことが義務付けられております(会社法125条1項)。株主名簿管理人を置いている場合にはその営業所となります。株主名簿とは株主および株券に関する事項を明らかにするための帳簿で会社の事務処理を円滑にする目的があります。株主と会社債権者は会社の営業時間内はいつでも株主名簿の閲覧・謄写請求をすることができます(同2項)。その際には閲覧・謄写請求をする理由を明らかにする必要があります。なお親会社の株主は裁判所の許可を得ることによって閲覧・謄写請求をすることができます(同4項)。
閲覧請求を拒絶できる場合
株式会社は株主名簿の閲覧・謄写を求められても以下の場合には拒むことができます。しかし逆にそれ以外の場合は拒むことはできないということです。
①請求者が株主としての権利行使以外の目的で請求したとき(125条3項1号)
②請求者が会社の業務を妨げ、または株主の共同の利益を害する目的で請求したとき(同2号)
③請求者が知り得た事実を利益を得て第三者に通報するた請求したとき(同3号)
④請求者が過去2年以内に知り得た事実を第三者に通報したことがある場合(同4号)
閲覧請求拒絶に関する裁判例
閲覧請求の拒絶が正当と認められた例として、金員の支払いを受けていた総会屋が報復目的で請求した事例(最判平成2年4月17日)が挙げられます。これはまだ上記の拒絶事由が明文化されていなかった旧商法の頃に権利濫用とされたものです。また金商法違反があった際に集団訴訟の原告を募るという目的は株主の権利とは別の制度として否定されております(名古屋高裁平成22年6月17日)。委任状勧誘を目的とする閲覧請求については、議決権の代理行使を勧誘するなど、自己に賛同する同志を募る目的は株主の権利確保に関するものと評価できるとして閲覧請求を認めております(東京地裁平成24年12月21日)。
コメント
本件で三陽商会はRMBキャピタル側の株主名簿閲覧請求に対し、株主や同社の秘密情報が含まれているとして拒否しているとされます。RMBキャピタル側は株主総会での委任状勧誘を目的とした請求であると考えられることから、上記のようにそれだけでは拒否事由には該当しないものと考えられます。また株主総会は今月末に迫っていることから仮処分申し立てに踏み切ったものと思われます。以上のように株主から株主名簿閲覧請求がなされた場合、株主としての権利を超えた濫用目的といった場合以外では拒否できません。また平成26年改正によって株主がライバル会社である場合に認めていた拒絶事由は削除されております。閲覧請求がなされた場合にはまずその理由の提示を求め、拒否事由に該当するかを見極めることとなります。どのような場合に拒否できるかを予め正確に把握しておくことが重要と言えるでしょう。
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