オリンパスが定時株主総会を延期、会社法の基準日について
2020/05/07   商事法務, 総会対応, 会社法

はじめに

 オリンパスと日本板硝子は先月30日、定時株主総会の開催を延期する旨発表しました。それに伴い基準日もそれぞれ時期を遅らせるとのことです。今回は会社法が規定する基準日制度について見直していきます。

事案の概要

 報道などによりますと、オリンパスと日本板硝子は新型コロナウイルスの感染拡大により決算や監査業務が遅延しており定時株主総会の延期とともに基準日を異なる日に設定しました。オリンパスは定時総会を7月下旬に延期し、議決権と期末配当の基準日を5月31日に、日本板硝子は定時総会を7月以降に延期し、議決権の基準日を6月4日に設定したとのことです。日本板硝子は期末配当は無配であるため、配当に関する基準日は従来どおり3月末のままとしたとされます。

基準日制度とは

 会社が一定の日を定めて、その日に株主名簿に記載されている株主を権利行使すべき株主と定める制度を基準日制度と言います(会社法124条)。たとえば「毎年3月末日の最終の株主名簿に記載された株主をもって、その事業年度の定時総会において権利行使できる株主とする」といったものです。行使できる権利は株主総会での議決権だけでなく配当を受ける権利などもふくまれます。多数の株主が存在する会社では誰が権利行使できる株主であるかを特定することが困難であることから、基準日の時点での株主を権利者として扱えば足りるとする制度と言えます。

基準日の手続き

 基準日を定める場合は、基準日株主が行使することができる権利の内容を具体的に定める必要があります。これは予め定款に定めることもできますが、その都度決定することも可能です。定款で定めない場合は基準日の2週間前までに基準日と行使できる権利の内容を公告する必要があります(124条3項)。そして基準日は権利行使の日の3ヶ月以内の日を定める必要があります(同2項)。なお権利の内容が株主総会での議決権である場合は、基準日後に株主になった者に議決権を行使させることも可能です(同4項)。ただしそれにより本来の基準日株主の議決権を認めないなど、権利を害することはできないとされております(同ただし書き)。

基準日と株主総会

 会社法296条1項では、「定時株主総会は、毎事業年度の終了後一定の時期に招集しなければならない」としているだけで、定時株主総会の開催時期や開催場所については特に制限はありません。ただし上記のように基準日を定める場合は基準日と権利行使日を3ヶ月以内とする必要があることから、通常は事業年度終了から3ヶ月以内となります。6月後半に各会社の定時株主総会が集中するのはそのためです。

コメント

 本件で日本板硝子は定時株主総会を7月以降に開催することを決定し、定款で3月31日と定めていた基準日も6月4日に変更しました。それに伴い5月14日から同社のホームページ上で基準日公告を行う予定としています。基準日を設定するか否かは会社の任意とされておりますが、ほとんどの会社では定款によって基準日を定めております。上記のように改めて基準日を定める場合は基準日の2週間前までにその旨の公告が必要です。昨今の新型コロナウイルスの感染拡大によって法務省などでは定時総会の電子化や出席者無しでの開催などを促しており、また時期自体を延期することも有用と言えます。感染拡大を防止するため、今期は柔軟な総会運営を検討していくことが重要と言えるでしょう。

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