監査法人が小僧寿しに「意見不表明」、監査意見について
2020/03/13 商事法務, 会社法

はじめに
小僧寿しは5日、昨年12月期の計算書類などについて監査法人から「意見を表明しない」旨の監査報告書を受領したと発表しました。今月11日に送付される株主総会招集通知に添付されるとのことです。今回は会計監査人の監査意見について見ていきます。
事案の概要
報道などによりますと、2018年12月期から債務超過に陥っていた小僧寿しは新株予約権や種類株式の発行によって資本増強を図っていたものの今期連結会計年度末における純資産額は900万円となっており、監査法人アリアは抜本的な資本増強策が未確定であるとして監査意見を不表明としたとのことです。監査意見の根拠となる十分な監査証拠を得られなかったとしています。これにより小僧寿しは定時株主総会で計算書類の承認決議を付議することとなります。
会計監査人とは
会計監査人とは、会社の計算書類などについて会計監査を行う会社法上の機関をいいます。会計監査人は公認会計士か監査法人のみが就任することができます(会社法337条)。株式会社は原則的に任意で会計監査人を設置することができますが、大会社、監査等委員会設置会社、指名委員会等設置会社は設置が強制されます(328条、327条5項)。選任は他の役員と同様に株主総会決議によりますが、選解任に関する議案は監査役が決定します(344条)。任期は1年ですが、定時総会で別段の決議がなされなければ自動的に再任されたとみなされます(338条1項2項)。
計算書類と会計監査
会計監査人設置会社は計算書類と附属明細書について会計監査を受ける必要があります(436条2項1号)。計算書類とは、貸借対照表、損益計算書、株主資本等変動計算書、個別注記表を言います。計算書類と事業報告は定時株主総会の招集通知に添付し、定時総会で承認を得る必要がありますが(437条、438条1項、2項、3項)、会計監査人による無限定適正意見が付されている場合は承認決議は不要となり、報告だけでよいことになります(439条)。
監査意見
会計監査人は会社経営者が作成した計算書類等について一般に公正妥当と認められる企業会計の基準に基づいて財務状況、経営成績、キャッシュフローの状況を適正に表示しているかの監査を行います。その結果は監査意見として表明することとなります。日本公認会計士協会のHPによりますと、監査意見は以下の4つの種類に分けられるとされます。
(1)無限定適正意見
会社の財務状況をすべての重要な点において適正に表示している場合に監査報告書に記載されます。
(2)限定付適正意見
一部に不適切な事項はあるものの、それが財務諸表等全体にたいしてそれほど重要性がないと考えられる場合にその不適切な事項を記載して、その事項を除き、すべての重要な点において適正に表示していると記載されます。
(3)不適正意見
不適切な事項が発見され、それが財務諸表等全体に重要な影響を与える場合にその理由を付して適正に表示されていないと記載されます。
(4)意見不表明
重要な監査手続が実施できず、結果として十分な監査証拠が入手できない場合で、その影響が財務諸表等にたいする意見ができないほど重要と判断された場合に、適正に表示しているかどうかについての意見を表明しないと記載されます。
コメント
本件で小僧寿しの会計監査を行っている監査法人アリアは抜本的な資本増強策が行われていることについて適切な監査証拠を得ることができなかったとして監査意見を意見不表明としました。これにより同社では計算書類等の承認決議を定時総会で求めることとなります。また同社は現在東証JASDAQに上場しておりますが、有価証券報告書でも意見不表明となれば上場廃止の可能性もあると言われております。以上のように会計監査人による監査報告は定時総会での承認決議の要否や上場基準などに影響を及ぼすことになります。会計監査を受け入れる体制や監査に対応できる内部統制の構築ができているかを今一度確認しておくことが重要と言えるでしょう。
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