ケフィア元会長を逮捕、出資法の預り金規制について
2020/02/25 商事法務, 金融法務, 出資法・貸金業法, 出資法

はじめに
警視庁は18日、加工食品などへの出資名目で違法に資金を集めていたとして通信販売会社「ケフィア事業振興会」(千代田区)の元会長鏑木秀弥容疑者(84)を逮捕していたことがわかりました。未返済額は約1000億円とのことです。今回は出資法が規制する預り金について見直していきます。
事件の概要
報道などによりますと、ケフィアは2000年頃からヨーグルトの種菌や干し柿、りんごジュースなどの通信販売を展開し、2011年頃から会員向けに通販サイトで扱う商品への出資を募る「オーナー制度」をはじめました。出資すれば半年後には10%前後の利息を上乗せした金額が配当されるというものです。しかし2017年頃から配当が遅延し始め、2018年9月には東京地裁から破産手続き開始決定を受けたとされます。負債総額は約1300億円で警視庁は詐欺容疑でも捜査を進めているとのことです。
出資法による規制
出資法によりますと、「不特定且つ多数の者に対し、後日出資の払いもどしとして出資金の全額若しくはこれをこえる金額に相当する金銭を支払うべき旨を明示し、又は暗黙のうちに示して、出資金の受入をしてはならない」としています(1条)。また2条では、「他の法律に特別の規定のある者を除く外、何人も業として預り金をしてはならない」としています。違反した場合には3年以下の懲役、300万円以下の罰金またはこれらの併科となります(8条3項)。また両罰規定があり、法人に対しても300万円以下の罰金が科されることとなっております(9条1項3号、8条3項)。なお別途詐欺罪が成立する場合には出資法違反は成立しないとされております(8条4項)。
預り金の成立要件
それでは「預り金」とはどのようなものを言うのでしょうか。金融庁のガイドラインによりますと、預り金とは預金等と同様の経済的性質を有し、①不特定多数の者が相手であること、②金銭の受け入れであること、③元本の返還が約されていること、④主として預け主の便宜のために金銭の価額を保管することを目的とするものであること、の4つの要件を全て満たすものとされております。元本保証と不特定多数の者を対象としていることが要点です。なお金銭以外の物やサービスなどで返還する場合は該当せず、たとえばゴルフ会員権のシステム等は適法となります。
適用除外
これらの預り金規制は「他の法律に特別の規定のある者」は適用除外となっております(2条)。他の法律と許認可等によって金融業等が認められている場合ということです。銀行法による銀行、信用金庫法による信用金庫、労働金庫法による労働金庫、農業協同組合法による農協などが挙げられます。つまり適法にこれらの事業を行うためにはこれらの法律に基づき監督官庁による許認可を得る必要があると言えます。
コメント
本件でケフィア社は通販会員を対象に通販サイトで扱う商品への出資を募り、半年後に10%前後の利息を上乗せした額を返還するとしていた疑いが持たれております。これが事実であった場合は不特定多数の者を対象に元本保証をした上で金銭を集めていたことになり、預り金に該当する可能性が高いと言えます。なお返済できなくなると知った上で出資を募集していた場合は別途詐欺罪が成立する可能性がありその場合は出資法違反は成立しなくなります。以上のように不特定多数から資金を集める行為は原則として金融機関等だけに認められております。寄付型や売買型以外のいわゆる投資型とよばれるクラウドファウンディングでもこれらの規制は適用されることとなります。株式発行や社債以外で事業資金を募る場合はこれらの規制にも留意し、違反の疑いがある場合には金融庁などに確認しておくことが重要と言えるでしょう。
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