厚労省がひな型を修正、36協定について
2019/08/28 労務法務, 労働法全般
はじめに
厚生労働省は23日、残業時間に関する労使協定のひな型に過労死ラインに近い残業時間が例示されていたとして適切な時間に修正したひな型を発表しました。長時間労働を容認するものとの批判があったとされます。今回は労働基準法が規制する時間外労働と36協定について見直します。
事案の概要
朝日新聞の24日付の記事によりますと、厚労省が公表していた残業時間に関する36協定のひな型では特別な事情が生じた場合の労働時間を最長で月90時間、または80時間まで残業させられるとする内容の例示が記載されていたとのことです。これは厚労省の通達で示されている過労死ラインに近いもので、過労死遺族による「全国過労死を考える家族の会」から文書で見直しを求められてました。これを受け厚労省は23日に修正されたひな型を公表しました。
労働時間と36協定
労働基準法では労働時間が定められており、使用者は労働者を1日8時間、週に40時間を超えて労働させてはならないとしています(32条)。例外的にこれを超えて残業をさせるためには労働組合または労働者の過半数を代表する者と書面で協定を締結し労基署に届け出る必要があります(36条1項)。これをいわゆる36協定を呼びます。従来はこれにより事実上時間外労働は無制限となっておりましたが、今年4月1日から時間外労働には上限が設けられ、これを超えた場合には6ヶ月以下の懲役または30万円以下の罰金となっております(119条1号)。
36協定による時間外労働の上限
現行の労働基準法では36協定を締結した場合でも時間外労働は原則月45時間、年間360時間となっております。そして通常予見することができない業務の大幅な増加など臨時的に特別な必要がある場合には特別条項を締結することによって年間720時間を上限とし1ヶ月100時間未満、複数月の平均80時間以内、月45時間を超える回数は年間6ヶ月までとなります。これを超えた場合は上記の罰則が適用されることとなります。
届け出の様式とひな型
今年4月1日からの改正労働基準法の施行に合わせて36協定の届け出の様式も新様式に統一されました。新様式の特徴としては一般条項と特別条項とで分けられていることと労働者に対する健康確保措置に関する記述が求められるという点です。具体的には一定時間を超えた労働者に医師による面接を受けさせる、健康診断を受けさせる、適切な配置転換をする、特別な休暇を与えるなどの項目が列挙されており、これらの中から選択することとなります。厚労省ではこれらの様式に合わせて記載例付きのひな型が用意されております。
コメント
厚労省が公表していた36協定のひな型では従来、記載例として1ヶ月の時間外労働の上限が90時間などと記入されておりました。これは1ヶ月100時間、2~6ヶ月の平均80時間という過労死ラインに近いものとなっておりました。これでは過労死ライン近くまでは労働させても良いと厚労省が容認しているかのように見えるとの批判の声があがり今回の修正となりました。修正後のひな型では記載例として1ヶ月の上限を55時間や60時間と記入されております。このように改正労基法では罰則付きの上限が月100時間となりましたが、それを超えなくとも過労死ラインに近い場合には別途労災認定や過労死により法的責任が発生する可能性が高まるということです。従来までのひな型を元に36協定を締結している場合には今一度協定内容を見直しておくことが重要と言えるでそう。
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