内部通報制度に関する認証制度とは
2018/08/27   コンプライアンス, 民法・商法

1.はじめに

 東洋経済は16日、今年の「内部通報が多い」100社ランキングを発表しました。近年では不正会計問題や品質データ改ざん問題などもあり、企業のコンプライアンス問題に関心が集まっています。こうしたコンプライアンス上の問題に対応する方策の一つとして、公益通報者保護法に基づく内部通報制度の整備がありますが、これに関して消費者庁は5月、「内部通報制度に関する認証制度の導入について(報告書)」を公開し、今年にも実施される予定の内部通報制度に関する認証制度の枠組みを示しました。今回は、この内部通報制度に関する認証制度について見ていきたいと思います。
 ※参照:最新!「内部通報が多い」100社ランキング(東洋経済オンライン)
   

2.内部通報制度に関する認証制度とは

(1)概要
 「内部通報制度に関する認証制度」(以下「認証制度」という。)とは、優れた内部通報制度を整備・運用する企業を高く評価する認証制度です。この認証を受けることで、その企業が適切な内部通報を活用したコンプライアンス経営等を推進するための優れた経営システムを構築しているという「お墨付き」を示し、また消費者等のステークホルダーが認証取得企業を高く評価することで、企業価値の向上や消費者等の安全安心の向上を図ることが狙いです。そしてこの認証を受けるため、実効的な内部通報制度の整備・運用を行う企業が増えることが期待されています。
 認証制度は、事業者自らが自身の内部通報制度を審査した結果を登録する「自己適合宣言制度」と、中立公正な第三者機関が事業者の内部通報制度を審査・認証する「第三者認証制度」の二つの制度から構成されており、前者は今年から、後者は来年以降実施される予定です。

(2)制度運用にあたる企業のなすべき取り組み
 公益通報者保護法に基づく内部通報の制度設計については、既に消費者庁が民間事業者向けの内部通報ガイドラインを策定しています。
 認証制度においては、必ずしもガイドライン記載の具体的施策の実施の有無を問われるわけではありませんが、有効に機能する内部通報制度の整備・運用にあたっては、上記ガイドラインの各項目を参考にすることができると思います。
 なお、公益通報者保護法の一般的内容及びガイドラインに記載された施策については、下記の参考記事を参照してください。
 *参考記事
  (PDFファイル)公益通報者保護法を踏まえた内部通報制度の整備・運用に関する民間事業者向けガイドライン(消費者庁)
  公益通報及び内部通報制度まとめ(企業法務ナビ)

(3)審査基準
 認証にあたっての審査基準は、いわゆるPDCAサイクルによる内部通報制度の継続的な維持・改善を促す基準とされる予定です。すなわち、「P」(制度設計)及び「D」(整備された制度・規定等にのっとった取組の実施)については全ての事業者に求めるものとし、「C」(実施した取組の評価)及び「A」(評価結果を踏まえた維持・改善)については、より進んだ取り組みを目指す事業者の場合に審査対象となると考えられています。
 消費者庁が公表した報告書では、およそ40項目にわたる審査基準案が示されています。この審査基準案では、おおむね①内部通報制度の適切な周知・研修の実施、②通報者の保護、秘密保持、実効的な調査是正の実施、③通報窓口の利用しやすさの向上などの環境整備、④制度運用に必要な権限、人員、予算等の確保などが求められています。
 評価の裏付けとなる資料としては、それぞれの制度設計の根拠となる規定(「P」)、実施結果の記録や研修の資料、マニュアル等の記録や報告書(「D」)、会社内外の評価結果やアンケート結果(「C」)、これらを踏まえた改善計画や報告書(「A」)などが挙げられます。
 *参考記事
  (PDFファイル)内部通報制度に関する認証制度について(資料)(消費者庁)

3.コメント

 企業のコンプライアンスに注目が集まる中、企業内の不正や違法行為の発見のため内部通報制度が重要な役割を担うとされています。内部通報制度に関する認証制度は、内部通報制度の整備を公益通報者保護法に基づく義務として求めるだけではなく、企業価値の向上や株主や顧客からの評価のため、積極的に制度設計を行うモチベーションを与えるものだと思います。企業としては、まずは内部通報ガイドラインに従った制度設計と運用を行い、認証制度が実施されたあかつきにはこれの活用を検討していただければと思います。

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