厚労省が指針公開、スポットワークの注意点について
2025/09/29 労務法務, コンプライアンス, 労働法全般, 外食

はじめに
厚生労働省が7月、いわゆる「スポットワーク」の労務管理に関する指針を公表しました。近年利用者が急増しているスポットワークですが、トラブルも同様に急増しています。
問題の背景
近年、「空き時間の有効活用」として、また企業目線でも「必要な時に必要な分だけ労働力を確保できる」としてスポットワークの活用が急増しています。
いまや登録会員数が2500万人以上とも言われる最大手の「タイミー」をはじめ、「メルカリハロ」や「シェアフル」などスポットワーク業界に参入する企業も急増しています。
かつて盛んだったものの2012年の労働者派遣法改正で原則禁止となった日雇い派遣の再来とも言われ、多くの企業も注目しています。
しかし一方で、企業側の都合で仕事がキャンセルされた、事前に聞いていた仕事内容と異なる、仕事中に負傷したのに労災保険は使えないと言われたなどトラブルも急増しているのが現状です。
また雇用関係が曖昧な場合も多く、労働関係法令の適用も有耶無耶になっている例もあるといいます。
そこで厚労省は、今回、スポットワークに関する留意事項をまとめ公表するとともに経済団体に要請書を送っています。以下概要を見ていきます。
労働契約締結時の注意点
厚労省の指針では、労働契約締結時における注意点としてまず、誰と誰が労働契約を締結するのか、契約当事者の確認を求めています。
労働基準法などの労働関係法令遵守義務を負うのは労働者と労働契約を締結した雇用主であることから当事者を明確にする必要があります。スポットワークでは労働者であるスポットワーカーと求人を出している事業主が労働契約を締結し、スポットワーク仲介事業者は契約当事者ではないとされます。
そして労働契約の成立時期は、スポットワーカーがマッチングなどを行っているアプリに応募した時点と一般的に考えられています。
一旦確定した労働日や労働時間等についての変更は労働条件の変更に該当し、事業者とスポットワーカー双方の合意が必要とされています。
また契約が成立した際には労働条件の明示が求められ、原則として雇用主である事業主がこれを行う必要があります。
休業させる場合の注意点
労働基準法26条によりますと、使用者の責に帰すべき事由による休業の場合においては、使用者は休業期間中当該労働者にその平均賃金の60%以上の手当を支払わなければならないとしています。
上でも触れたように、スポットワークにも労働基準法をはじめ労働関係法令が適用されることとなります。
労働契約成立後、事業主の都合で丸1日の休業または仕事の早上がりをさせることになった場合は「使用者の責に帰すべき事由による休業」に該当することから、スポットワーカーに対し所定支払日までに休業手当を支払う必要があるとされています。
賃金・労働時間に関する注意点
賃金や労働時間に関する注意点として示されているのが、事業主がスポットワーカーに命じた業務に必要な準備行為や業務終了後の後始末などに要した時間も労働時間に該当するという点です。
業務に必要な準備行為や業務終了後の後始末の例としては、指定の制服への着替えや清掃等などが挙げられます。求人の際にこれらの時間も含めた始業・就業時間の設定が求められています。また事業主の指示により待機が命じられた場合も同様に労働時間に当たるとしてその分の賃金支払いが必要です。
賃金について、労働条件通知書などで示した額を一方的に減額したり、「別途支払う」としていた交通費などを支払わないといった場合も上記のように労基法違反となるとされています。
コメント
近年、スキマバイトとして大きく注目されるスポットワーク。その一方で、一方的なキャンセルや労働条件の相違、労災関連のトラブルなど多くの問題点も浮き彫りになってきています。
かつて多くの企業で利用されていた日雇い派遣が禁止された背景には、悪質業者による給与の天引きや各種法令違反の存在があります。また、ワーキングプアの温床との指摘もされていました。
日雇い派遣とスポットワークの一番の違いは契約当事者にあると言えます。前者は労働者と派遣会社が契約当事者ですが、後者はあくまで労務の提供先と直接契約することとなります。そのため各種法令による義務も求人を出した会社が負うこととなります。
今後、裁判例や労基署等の判断の蓄積に伴い、法制度の整備が進んでいくものと予想されます。これらを踏まえた上で適切に利用していくことが重要と言えるでしょう。
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