死亡事故で経営者に有罪判決、管理・監督責任について
2018/07/20 コンプライアンス, 民法・商法, 刑事法

はじめに
走行中のトラックに積まれていた角材が落下して対向車のフロントガラスを突き破り、運転していた男性が亡くなった事故で業務上過失致死の罪に問われていた事件の判決公判で17日、福井地裁は製材所経営者に有罪判決を言い渡しました。直接事故を起こした従業員ではなく、経営者が罪に問われた事例です。今回は管理・監督責任について見ていきます。
事案の概要
報道などによりますと、2016年4月、福井市内の国道305号線で本件林和真被告(62)が経営する製材所のトラックから角材が落下し対向車のフロントガラスに直撃しました。角材はフロントガラスを突き破り運転していた男性(当時43)が亡くなりました。林被告は元従業員らとトラックの荷台に角材束を固定する際に十分にロープで固定するなどの適切な措置を講じないまま、元従業員に運転を命じていたとのことです。元従業員には自動車運転処罰法違反(過失致死)で禁錮1年6月、執行猶予3年が確定しております。
過失犯とは
過失犯とは、不注意によって構成要件上保護された法益を侵害する犯罪をいいます。過失犯の本質や構造については学説上多様な議論がなされておりますが、過失犯の成立要件は一般的に結果予見可能性、結果回避可能性を前提とした結果回避義務違反、すなわち注意義務違反とされております。予見ができないようなことまで注意を尽くすことは求められていないということです。ここで「予見」とは結果発生にいたる因果関係の基本的な部分が予見できなければならず、抽象的に不安感を抱く程度では予見が可能だったとは言えないとしています(札幌高裁昭和51年3月18日)。
管理・監督過失とは
過失犯は一般的に直接注意義務を怠った者に成立しますが、一定の場合にはその者の上司や取締役、代表取締役などの経営陣にも成立することがあります。まず監督過失とは、直接行為者が過失を犯さないように監督する注意義務に違反する過失を言います。そして管理過失とは管理者等による物的設備、人的体制などの管理不備それ自体を過失として問うものを言います。一般的に管理・監督過失が問われる事例はデパートやホテル、病院などの大規模火災の際に多いと言われます。
管理・監督過失に関する判例
管理過失の事例で、防火管理上の注意義務は誰が負うのかが問題となったもので、一般的には事業者が負い株式会社の場合は代表取締役にその責任があるとして取締役会や取締役の責任を否定したものがあります(最判平成3年11月14日)。また監督過失に関して病院火災の事例で、病院長は災害発生に備え、行動準則を定め、避難誘導など具体的対策を従業員に周知徹底し、未然に防止する注意義務があったとした裁判例もあります(札幌地裁昭和54年11月28日)。
コメント
本件で福井地裁は、経験の浅い元従業員にふぞろいな角材束を運搬させる際、落下防止措置が十分かどうかを検討して指示等を行わなければならなかったとして経営者の林被告に禁錮2年、執行猶予4年を言い渡しました。従業員自身の過失に加えて、それを監督する立場の者にも注意義務違反を認めたものと言えます。上記裁判例等から一般に施設や設備での災害防止の注意義務は経営者や代表取締役に認められます。設備管理についての包括的な権限は通常それらの人にあるからです。しかし本件のような落下事故等では直接指導監督する者にも注意義務が認められる可能性もあると思われます。事故防止は末端の従業員への周知徹底だけでなく、監督する者や経営陣にも注意義務が課されているという点を留意して対策を講じていくことが重要と言えるでしょう。
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