働き方関連法案成立、高度プロフェッショナル制度とは?
2018/07/17   労務法務, 労働法全般

1.はじめに
 働き方改革関連法案が6月29日、参院本会議において賛成多数で可決、成立しました。
 当該法案は残業時間の上限規制等の改正がまとめられていますが、「高度プロフェッショナル制度(高プロ)」は改正案中でも特に重要な柱です。これは「時間で働く」という旧来の労働意識から脱却し、成果や能率を重視する働き方の選択肢により世界で戦える企業へと成長する機会を与えてくれることが期待されている一方、長時間労働のおそれなどの危険も指摘されています。
 高度プロフェッショナル制度が行われるようになると、企業にはどのような影響があるのでしょうか。
2.高度プロフェッショナル制度とは?
高度プロフェッショナル制度とは、一部の労働者について労働基準法上の労働時間規制の適用を除外する制度です。つまり、高プロには1日8時間、週40時間という労基法32条上の労働時間規制を超えて、1日に何時間でも働かせることができることになります。また時間外、深夜、休日労働の割増賃金は支払われないことになります。この制度の趣旨は、時間ではなく成果、能力で評価される働き方を求める労働者・使用者のニーズに応え、労働者の能率向上と企業の生産性向上を図ることにあります。
3.「高プロ」の主な条件
 「高プロ」は「特定高度専門業務・成果型労働制」として労基法改正案42条の2において規定されており、主に以下の要件によって適用されます。 
(1)対象業務
 「高度の専門的知識等を必要とし」、「従事した時間と従事して得た成果との関連性が通常高くない」もので、厚生労働省令で定められる業務が対象となります。
 具体的には、金融商品の開発業務、金融商品のディーリング業務、アナリストの業務(企業・市場等の高度な分析業務)、コンサルタントの業務(事業・業務の企画運営に関する高度な考案又は助言の業務)、研究開発業務等が省令に規定されると想定されています。
(2)対象労働者
 ①使用者と書面による合意に基づき職務の範囲が明確であり、②年収について1年間に支払われることが確実に見込まれる賃金の額が、平均給与額の3倍を相当程度上回る水準として厚生労働省令で定める額以上の者が対象となります。
 ②の年収要件については、現在のところ1075万円以上であると想定されています。
(3)労働者に対する以下の配慮措置
 ①健康管理時間(「事業所内に所在していた時間」と「事業所外で業務に従事した場合における労働時間」)の把握
 ②1年を通じ104日以上かつ4週間を通じ4日以上の休日を与えること
 ③休日や労働時間に関する以下のいずれかの措置を講じること 1. 勤務間インターバル制度をとり、深夜労働が一定の回数を超えないこと 2. 健康管理時間が一定の時間を超えないこととすること 3. 1年に1回以上、 2週間継続した休暇を与えること 4. 労働者の健康診断を実施すること
 その他、労使委員会の5分の4以上の多数決議があること、行政官庁への届出をすること、労働者本人の同意があることなどの要件を満たす必要があります。
4.コメント
 高プロの制度が導入されることになりますと、労働時間に応じた賃金ではなく、労働者の成績・成果に応じた報酬を与えることができます。また残業代目当てのむやみな時間外労働を抑止することができ、企業における作業能率の向上が期待されます。他方、労働者側には、労働時間規制がなくなることによる長時間労働のおそれなどの不安が生じていると考えられます。
 高プロは多様かつ柔軟な働き方の選択肢を与える一方で、曖昧な労働時間、評価基準による労使間の紛争が生じる危険性もあると考えられます。企業の法務担当としては、こうした労使紛争の予防・対策のため、労働者が「高プロ」の要件に該当するか慎重に検討する、高プロの対象となる労働者についてタイムカードやパソコンの起動時間といった客観的な基準により労働時間を把握して証拠を残す、成果で労働者を評価する適切なシステムを導入するなどの措置を講ずるなどして、事前に紛争等を防ぐようにした方がよいかと思います。
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