EUがクアルコムに制裁金、EU独禁法について
2018/01/26   海外法務, 独占禁止法

はじめに

欧州連合(EU)は24日、米半導体大手クアルコムに対し、反競争行為を行っていたとして9億9700万ユーロ(約1350億円)の制裁金を課した旨発表しました。日本の独禁法に相当するEU競争法。今回はその概要を見ていきます。

事案の概要

報道などによりますと、クアルコム社はアップル社が製造販売しているスマートフォン「iphone」の第4世代高速通信規格「LTE」向けに半導体を納入しておりました。その際「LTE」用の半導体をクアルコム製のみを採用することを条件として巨額の報奨金を支払っていたとのことです。クアルコム社とアップル社のこのような合意は2011年から2016年まで続き、アップル社に支払った報奨金は数十億ドルに上るとされております。欧州委は同社が携帯端末向け半導体市場で独占的な地位を有することを利用し、アップル社が他社の部品を使用することを妨害し、技術革新を妨げたとしています。

EU競争法とは

欧州連合(EU)にも日本の独禁法や米国反トラスト法に相当する反競争法が存在します。一般にEU競争法と呼ばれ、欧州議会で締結された条約が根拠法となっております。具体的には欧州連合の機能に関する条約(Treaty on the Funcrioning of European Union)の101条、102条、107条、理事会規則2004年139号が挙げられます。EU競争法の執行機関は欧州委員会でそれに関する争訟の裁定は欧州司法裁判所を前身とする上級裁判所と普通裁判所が行ないます。欧州委の下した処分の取消訴訟などはこれらの裁判所が管轄することになります。

禁止行為の概要

(1)101条関連
欧州連合の機能に関する条約101条では、加盟国間の取引に影響を与えるおそれがあり、市場の競争を制限、歪曲する目的を有し、またはそのような結果をもたらす事業者間の協定、事業者団体の决定、共同行為を禁止しております。さらに具体的に①価格協定、②生産、販売、技術開発、投資に関する制限、③市場、供給源の割当、④差別的取扱、⑤抱き合わせ行為が列挙されております。①②③はいわゆるカルテル行為であり日本の独禁法の不当な取引制限に当たる行為と言えます。④⑤は不公正な取引方法の一種と言えます。違反した場合は欧州委によって排除命令や制裁金が科されることになります。(規則23条1項、2項)。またそれらの命令に従わない場合には1日あたり売上の5%に相当する履行強制金が科されることがあります(同24条1項)。

(2)102条関連
102条では、域内市場における支配的地位の濫用行為が禁止されております。具体的には①不公正な価格または取引条件を課す行為、②需要者に不利になる生産、販売、技術開発制限、③差別的取扱、④抱き合わせ行為が挙げられております。101条関連行為と一部重なっている部分がありますが、こちらの場合は事業者が市場における優越的地位を利用して行う場合となります。違反した場合の措置も101条の場合と同様となっております。

制裁金とリニエンシー制度

これらの規定に違反した場合に課される制裁金は上限が前事業年度の総売上高の10%となっており、欧州委はその範囲で制裁金の額を决定します。またガイドラインによりますと、カルテル行為の場合は当該取引市場での直近の事業年度の売上高の30%を上限として制裁金を算定します。日本の課徴金は行為と事業者の事業分野や規模によって一律に割合が決まっているのに対し、EU競争法の制裁金はある程度欧州委に裁量が認められております。そしてEU競争法にもいわゆるリニエンシー制度が存在します。対象となるのは101条のいわゆる水平カルテル行為で、欧州委が捜査の開始决定をするだけの証拠が無い時点で、决定をするに足るだけの証拠を最初に提出した事業者が全額免除となります。それ以降は提出した証拠の価値と順番によって50%減、30%減というようになります。

コメント

クアルコムはアップルに対し自社の半導体のみを採用し、他社のものを使用しないことを条件として数十億ドルの奨励金を支払っておりました。これは携帯端末市場における支配的地位を濫用し、不公正な取引条件を課す行為に該当し102条に違反したと判断されたものと考えられます。日本の独禁法で言うところの排他条件付取引、または排除型私的独占に当たる行為です。日本の課徴金制度では算定率は最大10%となっておりますが、EU競争法の制裁金は上記のとおり、欧州委に裁量があるものの日本よりも高い上限となっております。またリニエンシー制度も日本のものと比べて、当局の捜査にどの程度役立ったかという観点が入っており、かなり違いがあります。近年世界的に競争法が強化されており、海外に進出する日本企業の多くが影響を受けております。国によれば日本の課徴金よりも遥かに高額となってきます。また事業を行っている地域以外の国の競争法が域外適用されることも有りえます。海外進出の際には各国、各地域の競争法を把握しておくことが重要と言えるでしょう。

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