事業の分社化とは
2017/01/27   戦略法務, 商事法務, 会社法, その他

初めに

東芝は、財務基盤を強化するため主力の半導体事業を分社化したうえで、他社から出資を求める検討を進めているようです。
分社化とは、「企業内の一部分を本体から切り離し、独立した子会社にすること」です。そして分社化するには事業譲渡か会社分割の手続きが取られていますが、
会社分割は事業譲渡と比較してその手法が明確になされているために、用途自体は限定的である一方で分社化に際しての透明性が高いうえに手続きが簡素なので、会社分割制度導入以後の分社化では、会社分割が用いられるケースが多いようです。
会社分割には吸収分割と新設分割の二つがあります。吸収分割は不採算事業をその事業に特化している会社に吸収させることにより、分割会社のスリム化及び分割承継会社の事業拡大を目的として用いられることがあります。一方で、新設分割は会社の事業のうち、採算のとれている事業だけを切り出して新たな設立会社に承継させることにより、企業再生を図る目的で用いられることもあります。今回の東芝の分社化については主力の半導体事業の分社化ですので、新設分割を行うものと思われます。そこで、新設分割についてみてみます。

新設分割とは

会社分割のうち、分割会社が新たに設立する会社(新設会社)に事業に関する権利義務を包括的に承継させる制度です。吸収分割・新設分割(出典 やさしい会社法)
新設分割においては、新会社成立の日、すなわち新会社設立登記の申請日が効力発生日となります。

分割計画(書)の作成

新設分割を行うためには、会社法763条にある一定の事項を定めた新設分割計画を作成する必要があり、商業登記法との関係上、新設分割計画書を作成します。新設分割の手続き(出典 朝日中央グループ) 新設分割計画書の書式例(出典 会社分割ドットコム)

分割計画書の備置

分割会社は、新設分割の承認を受ける株主総会の会日の2週間前から新設会社設立の日の後6ヶ月を経過する日まで、株主や債権者の閲覧に供するため、分割計画書の内容等を本店に備置く必要があります。

分割計画書の承認

分割会社は、新設分割の効力発生日の前日までに作成した分割計画につき株主総会の特別決議による承認を受ける必要があります。
もっとも新設分割計画の承認を要しない場合も例外としてあります。

反対株主の権利の保護手続

分割計画に反対する株主には、「株式買取請求権」が認められています。
分割会社は新設分割計画が承認された株主総会の決議の日から2週間以内に、株主に対して新設分割をする旨等を通知または公告しなければなりません。

反対株式の買取請求権

新設分割をする場合において、分割会社の反対株主は分割会社に対し、自己の有する株式を公正な価格で買い取ることを請求できます。
これを株式買取請求といいます。
 ただし、分割会社がする簡易分割の場合には、
分割会社の株主に株式買取請求は認められません

会社の債権者保護手続

当事会社等は、各々の債権者に対して以下の項目につき、官報に公告、及び知れたる債権者へ各別に催告する必要があります。
・新設分割をする旨
・新設会社の商号・本店
・新設分割会社の計算書類等
・一定期間内に異議を述べることが出来る旨
 ただし、官報に加え、日刊新聞又は電子公告をした場合は、個別催告を要しません。

新設分割の無効

新設分割の無効は、効力発生日から6か月以内に、訴えをもって主張することができます(会社法828条1項10号)。
同訴えを提起することができる者は、当事会社の株主、取締役、新設分割を承認しなかった債権者等になります(会社法828条2項10号)。一方、同訴えの相手方となる者は、当事会社の双方となります(会社法834条10号)。
新設分割の無効を主張するためには、無効事由が必要となります。
この無効事由について、会社法は一切規定していませんが、新設分割計画の内容が違法である場合、総会決議に瑕疵がある場合、債権者保護手続が実施されていない場合等が無効事由に当たると考えられています。
また詐害行為取消権を行使することで会社分割の効力を否定することができるという判例も出ました(最判平成24年10月12日)。判旨についてはこちら(出典 銀座ブロード法律事務所 弁護士仲江武史)
また平成26年会社法改正により詐害的分割における債権者保護の規定が追加されました(759条4項~7項、761条4項~7項)。経緯などについてはこちら(出典 みずほ中央法律事務所)

最後に

新設分割が無効となってしまうと第三者にも効力が及びますので(838条)、当事会社や株主、債権者に重大な影響を及ぼすことになります。新設分割計画書が作成されなかったり、記載すべき要件を欠いた計画書を作成した場合、新設分割の無効事由となることがあるので、新設分割計画の内容の違法や総会決議の瑕疵が無いようにし、債権者保護手続きを実施し、また詐害的な会社分割と判断されないように新設分割手続きを行っていく必要があります。

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