中小企業、法人税減税額拡大
2016/11/21 税務法務, 税法, その他

■概要
中小企業は、大企業と比べて賃上げが遅れている現状があります。政府、与党は、2017年度の税制改正で、中小企業のみを対象にした法人税の減税方針を決めました。
■法人税減税の内容
減税の内容は、平成13年度に全企業を対象とした所得拡大促進税制の法人税控除額が増加しました。具体的には、中小企業の法人税の控除割合が、10%から20%に増加します。ただし、控除金額には限界が有ります。ここにいう中小企業は資本金1億円以下かつ従業員数が1000人以下の法人を指します。
■所得拡大促進税制
法人が、平成25年4月1日から平成30年3月31日までの間に開始する各事業年度において雇用者に給料を支払う場合に、一定の要件を満たす場合には、税額控除が認められる制度です。
この税制の対象となる企業は、青色申告をしており、雇用促進税制を使用していないことが前提条件になります。本制度の適用を受けられる期間は、平成25年4月1日以後の事業年度~平成29年4月1日以後の事業年度までになります。
例えば、平成29年度に法人税の控除を受ける場合、3月決算の企業では、平成25年4月1日から平成30年3月31日(以下、「基準年度」という)の給料総額より3%増加しつつ、平成28年度より給料総額と平均給料額が上昇していれば、税額控除を受けることが出来ます。詳しい要件は以下になります。
要件1
基準年度より給料総額(雇用者給与等支給額) が3%増加している。
※雇用者給与等支給額は、本制度の適用を受けようとする事業年度の所得の金額の計算上損金の額に算入される国内雇用者に対する給与等の支給額をいいます。
この給与等の支給額は、その給与等に充てるため他の者(その法人との間に連結完全支配関係がある他の連結法人を含みます。)から支払を受ける金額がある場合には、その金額を控除した金額となります。
要件2
前年度より給料総額(雇用者給与等支給額)が増加している。
要件3
前年度より平均給料( 平均給与等支給額 )が増加している。
※平均給与等支給額は、継続雇用者(適用を受けようとする事業年度及び前事業年度において給与等の支給を受けた国内雇用者)に対する給与等の支給額や雇用者数を用いて計算します。
■最後に
資本金10億円以上の大企業が抱える 内部留保が301兆6000億円 (財務省の2015年7~9月期法人企業統計、14年度は299兆5000億円)と過去最高に達していますが、大企業は、株主への利益還元を強化しており、従業員の賃金は上がっておりません。賃金が上がらないと税額控除のための要件を満たさないので、さらなる賃金上昇は見込めないことになります。
一方、本制度が適当された場合、中小企業は、大企業に比べて法人税が大企業より10%多く控除されます。中小企業でも上場企業の場合は、株主に配慮する必要がありますが、未上場の中小企業では株主に利益還元する必要が有りません。
そのため、未上場の中小企業は、今回の税制改正を利用して、従業員の賃上げのきっかけにしてみてもいいかもしれません。
私は、企業のコンプライアンス向上のための取り組みのなかでも、税務コンプライアンスに関することは重要だと考えます。理由としては、企業を成長させるため、増収増益は大事ですが、税務コンプライアンス方面を向上させることで、内部の不正行為を防止し、契約書や会社資産情報等の重要書類の紛失防止につながります。それは結果的に企業の利益、成長につながるからです。
企業におけるコンプライアンスは、結果的に企業の利益や成長につながるので、法律のことだけでなく、税制についても注目してみてはどうでしょうか。
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奥村友宏 氏(LegalOn Technologies 執行役員、法務開発責任者、弁護士)
登島和弘 氏(新企業法務倶楽部 代表取締役…企業法務歴33年)
潮崎明憲 氏(株式会社パソナ 法務専門キャリアアドバイザー)
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